Uber Eats配達パートナーの労組法上の労働者性

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    1.はじめに-Uber Eats 配達パートナーの労組法上の労働者性
    東京都労働委員会は、令和 4 年 11 月 25 日、Uber Eats の配達パートナーに労働組合
    法上の「労働者」性を認め、日本においてUber Eats 事業を運営するUber Eats Japan
    ウーバー・イーツ・ジャパン

    同会社と、同社の委託を受けて配達パートナーの登録手続や教育、サポート等の業務を行
    うUber Japan
    ウーバー・ジャパン
    株式会社に対して、配達パートナーらが結成したウーバーイーツユニオン
    との団体交渉に誠実に応じるよう命令を出した。これに対して、Uber Eats Japan 合同会
    社及び Uber Japan 株式会社(以下、「Uber
    ウーバー
    側」という 。) は、令和 4 年 12 月 7 日、
    「東京都労働委員会の判断は配達パートナーの方々が重視されるフレキシブル(柔軟)で
    独立した働き方などを十分に考慮しないものである」として、中央労働委員会に再審査を
    申し立てたため、都労委の上記判断が最終的な結論というわけではない。
    しかし、Uber Eats 事業のようなデジタルプラットフォームを運営する事業者側との間
    で労組法上の労働者性を肯定した初めての事例として意義は大きい。
    そこで、本レポートでは、Uber Eats の配達パートナーに労働組合法上の「労働者」性
    を認めた上記事例を通じて、労組法上の「労働者」概念について検討する。
    2.事案の概要
    (1)事案の内容
    本件は、配達パートナーらが結成したウーバーイーツユニオンが、令和元年 10 月 8 日
    に Uber Japan 株式会社に対して、令和元年 11 月 25 日にUber Eats Japan 合同会社に
    対して、事故の際の補償や報酬引下げ等について団体交渉を申し入れた。しかし、 Uber
    側は、ウーバーイーツユニオンに対して、配達パートナーは労組法上の「労働者」に当た
    らないとして団体交渉を拒否したので、ウーバーイーツユニオンが東京都労働委員会に救
    済を申し立てたという事案である。
    (2)本件における争点
    本件事案では、①配達パートナーが、労組法上の「労働者」に当たるか否か、② Uber
    Japan 株式会社は、配達パートナーである組合員との関係で労組法上の「使用者」に当た
    るか否か、③令和元年 10 月 8 日付の団交申入れに対して Uber Japan 株式会社が応じな
    かったこと及び同年 11 月 25 日付の団交申入れに対しUber Eats Japan 合同会社が応じ
    なかったことが、正当な理由のない団体交渉拒否に当たるか否か、がそれぞれ争われた 。
    本レポートでは、①配達パートナーが、労組法上の「労働者」に当たるか否か、につい
    て検討する。
    3.問題の所在-配達パートナーによる料理配達は Uber 側に対する労務の提供か?
    労組法上の「労働者」性は、労基法1 や労契法上の「労働者」性とは異なる概念2 であ
    1 労 働 基 準 法 上 の 「 労 働 者 」 は 、 「 職 業 の 種 類 を 問 わ ず 、 事 業 又 は 事 務 所 ( 以 下 「 事 業 」
    と い う 。) に 使 用 さ れ る 者 で 、 賃 金 を 支 払 わ れ る 者 」 と 定 義 さ れ て い る ( 労 基 法 9 条 )。
    そ し て 、 労 基 法 上 の 「 労 働 者 」 に 該 当 す る た め の 要 件 は 、 ① 「 事 業 」、 ② 「 使 用 」 さ れ て
    い る こ と ( 指 揮 監 督 下 の 労 働 )、 ③ 「 賃 金 」 を 支 払 わ れ て い る こ と ( 報 酬 の 労 務 対 償 性 )、
    で あ る ( 労 基 法 9 条 )。 そ し て 、 要 件 ② と 要 件 ③ は 総 称 し て 、 「 使 用 従 属 性 」 と 呼 ば れ る 。
    2 労 基 法 上 の 「 労 働 者 」 ( 労 基 法 9 条 ) と 、 労 組 法 上 の 「 労 働 者 」 ( 労 組 法 3 条 ) は 、 条
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    り、労組法の「労働者が使用者との交渉において対等の立場に立つことを促進することに
    より労働者の地位を向上させる」という目的(労組法 1 条)から、団体交渉の保護を及ぼ
    すべき必要性と適切性が認められるか、という観点から判断される。また、労組法上の
    「労働者」は、「賃金、給料その他これに準ずる収入によって生活する者」と定義されて
    いる(労組法 3 条)ので、労働契約による労働関係に準ずる労務提供関係が存在すること
    が前提となる。
    ところが、Uber Eats 事業では、プラットフォーム上で、飲食物を提供する飲食店と、
    飲食物を配達してほしい注文者と、飲食店から注文者に飲食物を配達する配達パートナー
    とをマッチングさせているだけなので、配達パートナーによる飲食物の配達が、プラット
    フォームの運営側( Uber 側)に対する労務の提供と評価できるかが問題となった。3
    4.判断枠組み
    (1)都労委が示した判断枠組み
    ア.配達パートナーによる料理配達は Uber 側に対する労務の提供と強く推認できる
    この問題について、都労委は、「ウーバーは、配達パートナーに対し、プラットフォー
    ムを提供するだけにとどまらず、配達業務の遂行に様々な形で関与している実態があり、
    配達パートナーは、そのようなウーバーの関与の下に配達業務を行っていることからする
    と、…配達パートナーが純然たる『顧客』(プラットフォームの利用者)にすぎないとみ
    ることは困難であり、配達パートナーが、ウーバーイーツ事業全体の中で、その事業を運
    営するウーバーに労務を供給していると評価できる可能性…が強く推認される」と判断し
    た。
    イ.厚生労働省労使関係法研究会報告の整理に従った判断枠組み
    その上で、都労委は、厚生労働省労使関係法研究会報告の整理4 に従って、労組法上の
    「労働者」性の判断枠組みを示した。
    文 上 、 「 使 用 さ れ る 」 と い う 要 件 が な い
    . .
    点 、 「 賃 金 を 支 払 わ れ る 」 と い う 要 件 で は な く
    「 賃 金 、 給 料 そ の 他 こ れ に 準 ず る 収 入 に よ っ て 生 活 す る 」 こ と が 要 件 と な っ て い る 点 、 で
    異 な っ て い る 。 そ の た め 、 指 揮 監 督 の 下 で 労 務 の 提 供 を し て い な い 者 ( 労 働 契 約 の 下 で 働
    い て い な い 者 ) で も 、 労 組 法 上 の 「 労 働 者 」 に 該 当 し 得 る 。
    こ れ は 、 労 組 法 は 、 「 労 働 者 」 概 念 を 、 労 働 組 合 に よ る 団 体 交 渉 を 助 成 す る た め 、 労 組 法
    に よ る 保 護 を 及 ぼ す べ き 者 は 如 何 な る 者 か と い う 観 点 か ら 定 義 し て い る の に 対 し て 、 労 基
    法 は 、 「 労 働 者 」 概 念 を 、 労 基 法 上 の 労 働 条 件 基 準 及 び 労 働 契 約 法 上 の 労 働 契 約 ル ー ル を
    適 用 す べ き 者 は 如 何 な る 者 か と い う 観 点 か ら 定 義 し て お り 、 両 者 の 観 点 ( 目 的 ) の 違 い に
    よ る も の で あ る 。
    3 Uber 側 は 、 あ く ま で 飲 食 物 を 提 供 す る 飲 食 店 と 、 飲 食 物 を 配 達 し て ほ し い 注 文 者 と 、 飲
    食 店 か ら 注 文 者 に 飲 食 物 を 配 達 す る 配 達 パ ー ト ナ ー と を マ ッ チ ン グ さ せ る プ ラ ッ ト フ ォ ー
    ム を 提 供 し て い る だ け で あ っ て 、 配 達 パ ー ト ナ ー が 直 接 取 引 し て い る の は 飲 食 店 で あ る か
    ら 、 配 達 パ ー ト ナ ー は Uber の 「 顧 客 」 に 過 ぎ ず 、 労 働 者 に は 当 た ら な い と 主 張 し て い た 。
    4 労 組 法 上 の 「 労 働 者 」 性 に つ い て 、 平 成 23 年 最 判 以 前 の 裁 判 例 は 、 指 揮 監 督 下 の 労 働 な
    ど の 使 用 従 属 性 に 近 い 概 念 で 労 組 法 上 の 「 労 働 者 」 性 を 捉 え つ つ 、 そ の 具 体 的 な 判 断 で は 、
    事 業 組 織 へ の 組 入 れ な ど の 経 済 的 従 属 性 を 示 す 要 素 も 考 慮 に 入 れ る 、 と い う 理 論 的 に 錯 綜
    し た 状 況 に あ っ た 。 こ の よ う な 状 況 の 中 、 2011 年 ( 平 成 23 年 ) 4 月 12 日 に 、 2 つ の 最 高 裁
    判 決 ( 最 判 平 23 ・ 4 ・ 12 民 集 65 巻 3 号 943 頁 〔 新 国 立 劇 場 運 営 財 団 事 件 〕、 最 判 平 23 ・
    4 ・ 12 労 判 1026 号 27 頁 〔INAX メ ン テ ナ ン ス 事 件 〕) が 、 労 組 法 上 の ...

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