インバウンド振興を訪日外国人誘致策と考えるとその歴史は古く、1893年(明治26年)に当時の日本を代表する実業家渋沢栄一が外貨獲得を主な目的とした国際観光事業の必要性を唱え、外国人旅行者誘致の組織「喜賓会」を発足させたことから始まる。
その後1912年には、当事の鉄道省のもと、後のJTBとなるジャパン・ツーリスト・ビューローが官民合同で創設され訪日外国人の誘致の促進を行っていた。昭和に入り戦後復興を経て1964年の東京オリンピック開催に向けてのホテル建設やインフラ整備等もインバウンド振興策の一環であったといえよう。
このように進んでいったインバウンド振興であったが1964年に観光目的の海外渡航が自由化され、高度経済成長期に入ると反対に海外へ出かける日本人(アウトバウンド)が増加していった。実際、JNTO日本政府観光局の統計によると大阪万博が開催された1970年の翌年1971年からはアウトバウンドがインバウンドを上回り以降2014年までこの状況は続くこととなった。この間バブル経済崩壊による長期間の経済低迷が続いたことや少子高齢化に伴う人口減少による更なる経済縮小への対応策として、2003...