日本大学通信教育部
2019~2022年度 リポート課題集
次の2問すべてについて答えなさい。
①昭和期に女性作家によって書かれた作品を
2つ読んで、その文学的意義を説明しなさい。 (例…平林
たい子「施療室にて」 、林芙美子『放浪記』 、中条百
合子『伸子』ほか)
②昭和期の児童文学作品を2つ以上読んで、その文学的意義を説明しなさい。 (例…宮沢賢治 ・ 坪田譲治 ・小川未明・新美南吉・竹山道雄ほか)
昭和初期の日本文学の流れを読み解くには、1920 年代から 1930 年代にかけ
て流行したプロレタリア文学の意義(定義)をはっきりとさせておく必要がある。
プロレタリア文学とは、労働者階級の観点から厳正なるリアリストの態度をもっ
て現実を描いた文学である。特徴としては、世界を変えるための思想と結びつい
た文学で、メッセージ性が強い。それまで、貴族的な、高尚なイメージがあった
文学において、プロレタリア文学の登場は革新的であった。
宮本百合子著の「貧しき人々の群」では、地主の娘の主人公が、自分たちの生
活のために苦しむ小作人たちを見つめ、社会の矛盾に気づき葛藤する様が描かれ
ている。
作中に出てくる、「私共と彼らとは生きる為に作られた人間であるということ
に何の差があろう?」「世の中は不平等である。天才が現れれば、より多くの白
痴が生まれなければならない。」「世が不平等であるからこそー富者と貧者は合
することの出来ない平行線であるからこそ、私共は彼等の同情者であらねばなら
ない。」という言葉からは、百合子の人道主義的な思想を感じとることができる。
宮本百合子は、その後「伸子」にて...