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論文要旨
論題:ディスクロージャー優良企業における業績予想の在り方
副題:業績予想の正確性を軸とした検討
決算短信による業績予想公開制度は、他国に類をみないわが国独特の制度である。予測情報において、わが国は、ディスクロージャー先進国といっても過言ではあるまい。本稿では、ディスクロージャー優良企業が、楽観的な予測を行っていることが判明した。このことは、強気の予測を行うインセンティブを示唆している。また、精度の高い予測を行う傾向も確認できた。
いずれにせよ、業績予想はディスクロージャー優良企業にとってさえ負担になっている可能性が高い。その原因は、①予測値の目標値化、②企業が将来を予測する側であると同時に予測される側でもあるという矛盾、である。正確な業績予想を予測値として出すことは、達成しなければならない圧力があることを示唆している。つまり、経営者予測が目標と化すのである。環境変化の激しい今日において、予測は天気予報のようなものであろう。その達成にまで責任を持たされては、企業にとって負担となる。本来、企業の将来を予測する責任は投資家にあるはずである。ところが、日本では、プロであるアナリストの予測でさえ、経営者予測に依存している現状がある。
解決策としては、2つの方向性が考えられる。ひとつは、アナリスト予測の充実である。もうひとつは、経営者予測の充実である。いずれも投資家からの信頼の厚いディスクロージャー優良企業だからこそ容易に実行可能なのではないだろうか。業績予想に関する情報開示を拡大することは、企業の負担になるかもしれない。しかし、その予測情報を用いて、アナリストや投資家が自己の責任のもとで、企業の将来を予測できるような環境をつくればよい。そのときこそ、企業は、経営者予測の正確性という呪縛から解き放たれるのではないだろうか。