財務管理論のレポートになります。リスク分散を目的として、昭和シェル石油と東京ガスに投資した結果、最適ポートフォリオを実証しました。A+評価です。
財務管理論レポート:最適ポートフォリオ決定理論
―昭和シェル石油と東京ガスを例にして―
目的
株式でポートフォリオを組み、リスク分散をする上で一番大切なことはなんだろうか。筆者は、値動きの異なる投資対象を見つけることではないかと考えた。なぜなら、分散投資をしても、同じ値動きをされては、リスクは変わらないからである。そこでポートフォリオを組むにあたり、原油価格に注目した。原油価格は、2002年ごろからの上昇と、2007年からの高騰、そして2008年の急落と、値動きが激しく、原油関連銘柄は大きく影響を受けているのではないかと考えたからである。そこで、原油価格と連動して値上がりしそうな業界として石油会社を、値下がりしそうな株として燃料を石油に頼る電力会社を選ぶことにした。本稿では、「昭和シェル石油」と「東京電力」に分散投資をしたと仮定し、値動きが特に激しかった2004年から2009年の5年間の月次推移を用いて、ポートフォリオの軌跡を検証し、リスクの分散ができているのか考察したい。また、指数モデルを使った場合と、使わなかった場合にどのような差がでるのかも考察する。
2社の月次収益率と市場指数の変化率
次の表は、2004年4月から2009年4月の5年間の、昭和シェル石油と東京電力の月次収益率と、東証株価指数TOPIX500(以下TOPIXと呼称する)の値動きと収益率である。
ポートフォリオの収益率の期待値とリスクの関係
以上から、投資比率ごとの期待収益率と標準偏差の関係は、
となる。
これを図示すると、
以上のようになる。
指数モデルを用いた場合
指数モデルを用いて計算する。この場合、2社と市場の回帰分析を行い、切片と傾き、誤差項を求めなければならない。
以上より、計算すると、
となる。これを図示すると、
結論
ポートフォリオの軌跡は、左に凸を描くことが分かった。これは、リスクの分散ができていることを示していると考える。なぜなら、値動きを等しくするならば、ポートフォリオの軌跡は、直線になる筈だからである。したがって、昭和シェル石油と東京電力の2社に投資することで、リスクを分散できるといえよう。また、指数モデルを用いた場合と用いなかった場合では、期待収益率は一致したものの、標準偏差に若干の誤差が出ている。いずれも、指数モデルを用いた場合のほうが、標準偏差が低くなっている。このことから、指数モデルを用いると、リスクの評価が低く出る可能性がある。しかし、原因を推察すると、投資対象の値動きと市場の値動きのかい離にあるのではないか。仮に、この推察が正しいとすれば、指数モデルでは、本稿のケースのように、市場の変動が、投資対象の値動きより小さいほど、リスク(標準偏差)が低く出る。逆のケースでは高く出るのではないか。つまり、投資対象の変動と、市場の変動が極端にかい離しているケースでは、指数モデルを使うことができないのではないかと考えられる。
(参考文献)
大塚宗春、佐藤紘光『ベーシック財務管理 第二版』中央経済社、2009
大塚宗春、宮本順二郎『ビジネス・ファイナンス論』学文社、2003
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