(課題1単位目)
教科書の第1章「地理学の歩み」を節ごとに要約しなさい。
なお、3節の「地理学の概念」については、(1)分布から(7)景観までの地理学的概念について、それぞれを要約して記述しなさい。
地理学は、古くから多くの地誌書にかかわり、測量学、地理学、地名学、地誌学など、時には植民地支配のための地域調査学を成立させてきた。地球上の多様な情報を整理し、記述し、表現し、社会に対して有用な情報を伝達する重要な役割を果たしてきたのである。地球に関する知識の整理・表現学としての地理学の重要性は、情報社会といわれ現代において一層高まっている。また、地理学は長い間、学校教育における社会科地理の存在に支えられてきた。地理教育は地理学の研究を支える基盤として重要な役割を果たしており、学校教育における地理教育の体系と教材開発手法を提示し、これからの教育に貢献することが求められている。
地球上のあらゆる場所は、自然的にも社会的にも違いがあり、地図上における地形・気候・土壌・植生・資源等の自然的な条件や人類の歴史の中で形成された文化や社会組織等の人文・社会的条件を地理的条件と呼ぶ。地理学は、この生成とメカニズム及び、地理的条件間の関係について分析し、その中から普遍的な原理を導き出すことを一つの目的としている。これらを系統地理学といい、分析対象となる地理的条件によって分類化される。地理的条件も歴史的に変化することから普遍的原理とされる地理学的論理も時代とともに変化していくのである。
一方でこれらの普遍的原理を応用し、地域を総合的に分析することに地理学としての独自性があるという立場が地誌学、地域地理学である。地誌学は、場所に関する知識を整理・表現すると同時に、ある空間的範囲に居住する人類集団が作りだしてきた特徴、すなわち地域の個性を見出しより深くその場所の理解を深めようとする。地域の総合科学として、地理的条件の複合性を構造的に把握して地域性を明らかにする役割を担っているのである。
地理学は、近代科学として成立してからもその学問としての性格や対象・方法をめぐって議論が繰り返され、環境論と地誌学論があり、多くの地理学者によって唱えられた。環境論については人類が構築した文化・社会も大きな地理的条件となってきたことを示している。
地理学は、地理的条件と人類集団との関係の地域性や法則性を追求するが、それを可能とする分析手法が必要であり、共有する言語が必要であり、それが地理学的概念である。
特定の地理的事象の広がりを示し、地理的分布ともいわれる分布は、位置、距離、広がりという概念で構成され、地表上の地理的条件との関係を示す意味ある広がりを示している。すなわち地理事象がどこからどこまでどの程度の大きさ、形態をもって現れ、何を意味しているのかを測定する地理学によって重要な概念である。(また、地理的分布を手掛かりに地理的条件と自然的・経済的・社会的条件との関係性に注目し、地域性あるは法則性を見出す基礎的作業である。)
地理的事象が出現している範囲であり、他の地域と区別される性格を有しているのが地域である。1つ以上の地理的事象によって性格づけられ区分された範囲であり、地理的分布を指標として地域を抽出する作業を地域区分といい、いくつかの地域概念に分類される。地域がある程度等質的指標で区分される場合、等質地域、均等地域という。それらの地域にしても地域は一定の空間的まとまりを示している。地理学における構造は、地域間諸関係に置き換えられて地域構造と言われ、ある地域内の地理的条件の違いによって地域が細分化され、それらが全体を構成している場合、それを地域内構造といい、地域と地域の構造的な地域関係を示す概念の2つの考え方に分けられるのである。
人間の活動目的に最も適合した地表上の場所あるいは地点を探し出し、選択・決定することを表す地理的概念を立地という。一方で、立地より強い権限と意思が働き、目的達成のために最適な場所あるいは地点に事物を設置する行為を配置という。人間の意思決定を伴う行為・行動という意味が包含されている。
地域概念とは対照的なのが空間概念であり、物体が存在しない、相当な広がりのある部分とされる。さらに、人間は多様な地理的事象を個々の主観的な感性を通して認識し、行動している。これを地理学では知覚の概念といい、人文主義地理学、行動主義地理学の主要な概念となっている。
最後に、人間の眼でみた可視的な風景あるいは景色であり、それを景観という。風景・景色は多様な自然や人間の活動を表しており、景観の変化によって過去から現在までの人間活動を類推することができるという意味で重要な地理的概念である。
このように、地球上の多様な現象を地理学的概念を操作して分析・考察する地理学的思考が重要であると考える。地理学は人類が築き上げた科学の一部であり、いかなる体系と内容をもって地球上の人類に対して貢献するのか、すなわち、地理学の目的は場所(地域)の理解を通して、人類がすべて平等に平和に豊かに過ごすための知識や方法を提示することにある。人類は皆平等でなければならないが、現代世界において、国家間・地域間の不平等と差別は明らかに存在する。多様な性格を持つ地域の集合体と理解し、人類や地域の在り方を学ぶ必要がある。
(2単位目)
① 教科書の第1章を除いた章からひとつを選び、節ごとに内容を要約しなさい。
② ①で選んだ章について、とくに印象に残った点、または疑問に思った点をあげ、理由を説明しなさい。
社会・福祉の地理
社会と福祉には地理学が関係しており、それは人間にとって理解しなければならないことであると感じる。それを踏まえ、この章についてみていこうと思う。
地理学では、ある人口を何らかの視点によって分割・分類してできている下位の人口グループを社会集団という用語で指しており、それは4つの視点からとらえられている。一つ目は、特定の土地に長く暮らし衣食住の生活様式が共通で、水や野生資源の利用権を共有し、宗教施設や墓地を共有するような人々をある土地と結びついた集団とまとめている。二つ目は、統計指標によって人口を分割し、それを社会集団とみなす統計的に分類可能な集団である。社会集団を生み出す統計指標には属性指標と地域指標があり、単位が異なり、こうした項目の設定により、社会集団と空間の新しい関係が見出される。3つ目は主観的に共感される集団である。村の領域の内側と外側は強く意識され、内側にいる人々との共管が可能であるとの感覚がもたらされる。4つ目は、社会的に構築された集団であり、自分の属する集団とそうではない集団との間の境界を確定しようとすることが、実践によって生み出される社会的構築物である。この社会集団によって基礎地域の空間的境界を越えて日常的に行動するようになったが、越境の程度は時代によって、社会集団によって異なる。日本の子どもの生活空間の時代変化が起こり、祖父母世代は同じ集落に住む子どもが屋外で遊んでいたが、1970年代以降は集落の境は意識されず活動空間は広範囲に広がっていることがいえる。
日本では戦後、都市化の発展によって伝統的な地域社会が解体し、古いムラ社会とは異なる新しい地域社会という意味でコミュニティという外来語が使用された。農村地域の多くで、人口流出によって過疎化が進み、旧来の地域社会を維持できないところが出てきた。一方で都市部では、急激な新住民の流入により、隣組などの地縁組織の再編を迫られ、過密化した都市人口を収容するため都市周辺の宅地開発が急速に進んだ。ところが、農業集落では農業を基盤とした古くからの集まりや、集まりを介した人間関係を依然として保っている。そのことから、住民間に対立や緊張関係が生まれてくるのである。
新しいコミュニティとして、周囲を塀やフェンスで囲い、入り口に私設警備員を配置して、外部からの侵入を制限・監視しているような住宅地区のゲーテッドコミュニティと、嗜好や社会階層・属性が共通した人々が集住している地区のライフスタイルコミュニティが出てきた。また、新しい地域社会の担い手としてNPO法人が注目されるようになった。非営利の社会貢献活動を行う市民団体であり、まちづくりや福祉など様々な活動を行う。終身雇用が崩れ、人生の長い期間を退職後に過ごす高齢化時代に突入した日本にとってNPOに委ねるところが増えてきたが、NPOの分布は空間的に不均等であり、持続性も保証されないため、問題にもなっている。
学習をする上で印象に残っている部分は、現在、日本の社会的問題となっている少子高齢化である。私たちは現代社会を生きていく上で今後も考えなければならない問題であると考えると同時に、改めて、地域によって差が生まれているということを実感した。その主要な原因は、経済・社会の発展によって出生率と死亡率が低下することにある。高齢化は過疎地域の小規模自治体で高く、大都市圏の郊外地域では低く、65歳以上の親族のいる割合も大都市では低く、地方圏で高く、高齢者の世帯構成も地域による違いがあると考えられる。高齢化をもたらす要因としては、若年人口の転出と中高齢世代の残留、高齢世代の参入、住民の加齢がある。住民が加齢しても都市開発によって新しい若年人口を増やすことや、地域によっては保険によって育児に協力し補助を行うところもある。そういった国や市町村の取り組みを増やし、地域格差を減らしていく必要があると考える。年金よりも育児保障を行うことのほうが現代の私たちにとってはよい方向に行くのかもしれない。
また、日本だけでなく先進国でも問題となっており、...