倫理学のレポートで、パーソン論について論じています。応用倫理学、生命倫理学、安楽死論、権利論などに関連する内容になっております。本文の字数は3439字ほどです。
パーソン論に関する考察
日本国内の生命倫理学の入門書では、パーソン論に触れられることが多くある。森岡は、『生命学に何ができるか』(2001)において、第二章に「パーソン論のリアリティ」、「パーソン論との対決」という節を設定している。宇都宮らの『倫理学を学ぶ人とために』(1994)には、品川がパーソン論について説明している箇所がある。このようにパーソン論は生命倫理論、とりわけ人工妊娠中絶論や安楽死論を語るうえで重要な議論であることは間違いない。その是非については、米国ではパーソン論を肯定的に捉えている生命倫理学者が多くいるが、日本では否定的に捉えている学者が多いように思われる。我々はパーソン論を受け入れるべきなのだろうか、またパーソン論から生じる問題点はどのようなものなのだろうか。
ところで、そもそもパーソン論とはどのような議論なのだろうか。国内においてパーソン論の解釈というものは大きく分けて二通りある。第一の解釈としては、森岡(2001)や小松(2004)らに見られるような「パーソン論は、自己意識や理性の有無により、人間を生きるにては江口(2007a,b)に見られるような「パーソン論...