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無料で見れます! 東京福祉大学 障害者福祉論 1.障害者福祉の基本理念について 2.障害の概念について 3.ノーマライゼーションの理念について |
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東京福祉大学の障害者福祉論の科目終了試験のポイント1-3です。
科目名:障害者福祉論 科目コード:2023
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1.障害者福祉の基本理念について
障害者福祉の基本理念は、時代とともに変遷を遂げながら、障害者の権利を守り、社会参加を促進する方向へと進化してきた。かつて、障害を持つ人々は社会から追い出され、隔離や排除の対象となることが多かった。しかし、社会の発展や価値観の変化とともに、障害者の権利や尊厳が重視されるようになり、現在ではノーマライゼーションやインクルージョンという考え方が広まっている。本稿では、障害者福祉の歴史をたどりながら、その理念の変化を探る。
近代以前の日本において、障害者はその人またはその肉親が前世で罪を犯したからという因果応報に基づく障害観で捉えられており、障害が重度であるほど極悪非道なことに手を染めたと考えられることもあった。そのため、障害者が生まれた場合、一家の名誉を傷つけるものとして扱われ、近所の人の目に触れないよう家の中に隠された。一方で、宗教的な背景から施しの対象として位置づけられ、寺院や教会などが障害者の支援を行うこともあった。
戦後の日本では、戦地でのストレスから不眠やうつといった精神疾患が多く見られ、治療が進められてきた。この頃から、障害は治療や教育によって改善できるものと捉えられるようになり、障害者が社会の中で労働力として活用されるべきだという考えが生まれた。その後障害者の自立と社会参加に関して、支援の基本原則を定めた障害者基本法が制定され、全ての国民が、障害の有無によって分け隔てられることなく、相互に人格と個性を尊重し合いながら共生する社会を実現するために環境整備が進められることになった。
近年では、年齢や障がいの有無などにかかわらず、みんなが基本的な権利や普通の生活が保障されている状態を作るべきだというノーマライゼーションや障害者だからといって分離されることなく、学ぶ機会や働く機会を平等に得られる環境を目指すインクルージョンといった考え方が浸透している。このような考え方は、福祉や介護の分野で取り入れられるようになっており、教育、雇用の促進、住宅の確保、情報をスムーズに取得し意思を示すための機器などのバリアフリー化など、生活に関わるさまざまな分野について障害者支援の方法が模索されている。
ここまで、障害者福祉の基本理念について述べてきた。近代以前においては、差別の対象となっていた障害者は、戦後から改善できるものとして広く知られるようになり、共生社会の実現が進められてきた。現在では、障害者が単なる支援の対象ではなく、一人ひとりの権利を持つ主体として尊重されることが求められており、この理念をさらに発展させていくことが重要となる。
労務女子の労務実務コンメンタール「【障害者基本法】目的や障害者の定義は?概要をわかりやすく解説」2024年
https://roumujyoshi.com/basic-act-for-persons-with-disabilities/
2.障害の概念について
障害者基本法において障害者は、身体障害、知的障害、精神障害その他の心身の機能の障害がある者であって、障害及び社会的障壁により継続的に日常生活又は社会生活に相当な制限を受ける状態にあるものとされており、障害者手帳の所持者等に限定していない。従来は、障害を個人の欠損や機能不全として捉える「医学モデル」が主流であったが、近年では、モノ、環境、人的環境など社会のあり方によって生み出されているとする「社会モデル」へと障害の概念が時代とともに変化している。
この変化の背景には、WHOが提唱した障害の分類方法がある。WHOは1980年に国際障害分類(ICIDH)を発表し、障害を4つの概念に分類した。1つ目が障害の原因となる病気やケガを指す疾患、2つ目が疾患を原因として起こる機能障害、3つ目が機能障害を受けて生活上必要とされる行為を行う能力が低下している状況の能力障害、4つ目がこれらによって引き起こされる幅広い社会的な問題を指す社会的不利である。この分類方法により、障害を段階的に捉えることが可能となり、認識の広がりを持たせることに繋がった。しかし、環境の重要性が十分に考慮されていないといった批判や誤解も存在したため、改善をするべく完成したのが国際生活機能分類(ICF)である。
ICFは人間の健康状態を構成する生活機能、生活機能に関する背景因子が互いに影響し合う相互作用モデルを採用している。これにより、多くの要素が複雑に絡み合う健康状態の的確な理解に近づく。生活機能は生命維持に直接的に関わる機能である心身機能・身体構造、生活上の目的をもっておこなう、具体的な行動である活動、職場や家庭での関わりを表す参加の3つで構成されており、この3つの要素も相互に作用している。またICFでは、生活機能そのものではないが、大きな影響を与え機能の低下をもたらす要素として環境因子と個人因子の2つを重要視している。
ICFの採択により、障害の概念は単なる個人の医学的問題ではなく、社会的な要因と密接に関連していることが強調された。これにより、医療や福祉、介護の分野において境整備や社会参加の促進が重視されるようになった。
ここまで障害の概念について述べてきた。ICFが導入されたことで、障害の概念は医療モデルから社会モデルへと変化した。従来のICIDHでは、障害を個人の能力の欠損として捉えていたが、ICFでは、環境要因や社会との関係が障害のあり方を大きく左右すると考えられるようになった。これにより、障害者が生活しやすいような環境を整備することが求められるようになり、現在でも社会全体で障害者の権利を尊重し、支援する取り組みが行われている。
ジョブメドレー「ICF(国際生活機能分類)とは? 介護・看護での書き方も解説」2023年
https://job-medley.com/tips/detail/895/
3.ノーマライゼーションの理念について
ノーマライゼーションとは、年齢や障がいの有無などにかかわらず、みんなが基本的な権利や普通の生活が保障されている状態を作るべきだという理念である。これは、日本の福祉政策の基本的な考えとして定着しており、例えば、厚生労働省が障害者の自立と社会参加の支援策を実施する時の基礎理念となっている。このノーマライゼーションの概念は、デンマークのバンク・ミケルセンによって提唱され、その後世界的に広まることとなった。
バンク・ミケルセンは、1950年代のデンマークにおいて、障害者福祉の改革に取り組んだ人物であり、ノーマライゼーションの生みの親でもある。彼は、当時決して良いとは言えない環境に置かれていた知的障害児の存在を問題視しており、知的障害者も一般的な人々のような生活を送るべきだと考え、障害者が一般社会の中で生活することを可能にするための政策を提唱した。こうしてノーマライゼーションという言葉が生まれ、1960年代に北欧に広まり、発展していった。
その中でスウェーデンの知的障害児者連盟のベンクト・ニィリエは、ノーマライゼーションの原理において、何が当たり前なのかについて、一日のノーマルなリズム、一週間のノーマルなリズム、ライフサイクルにおけるノーマルな経験など八つの原則を示した。その後は、国連の知的障害者の権利宣言にこの理念が反映されるようになり、さらには障害者の権利宣言、障害者の権利に関する条約へと引き継がれていき、現在においてもこの理念は障害者福祉だけでなく、社会福祉全般における基本的な理念の一つとして広く受け止められている。
日本においても、ノーマライゼーションの考え方は福祉、介護の分野で取り入れられるようになっており、障害者自立支援法、障害者総合支援法、障害者差別解消法などさまざまな法律が制定され、障害者にとって暮らしやすい社会を実現しようと努力している。しかし、このような法律が制定されても障害者に対する差別や偏見が存在する。また障害者の雇用率や賃金水準は低い状態で経済的な自立が難しく、障害者に対する支援も不十分である。そのため、国や企業は毎年12月3日から9日までを「障害者週間」とし、ワークショップなどを開催する、雇用する企業に向けた雇用拡大施策や障害特性に応じた雇用施策、バリアフリー化の推進などさまざまな取り組みを行っている。
ここまで、ノーマライゼーションについて述べてきた。ノーマライゼーションの理念は、バンク・ミケルセンから始まり、ベンクト・ニィリエが世界に広げることになった。現在の日本においても社会福祉全般における基本理念となっており、今後も、社会全体がこの理念を実現するためのさらなる環境整備や支援策の充実が求められる。
Izul「ノーマライゼーションとは?意味や歴史、実際の取り組み事例を解説」2024年
https://izul.co.jp/media/others/normalization/