このような現状から、ゆとりのある教育活動を展開し、子どもたちに「生きる力」をはぐくむ教育が重視されてきたのである。豊かな人間性や社会性、国際社会に生きる日本人としての自覚の育成(他人、社会、ルールやモラル、我が国のこと、世界のことを意識できるゆとり)、多くの知識を一方的に教え込む教育を転換し、子どもたちが自ら学び自ら考える力の育成(自ら学び自ら考え、自ら判断し、表現し、解決することのできるような主体的な対応・創造的な行動のゆとり)、ゆとりのある教育活動を展開する中で、基礎・基本の確実な定着を図り、個性を生かす教育の充実(基礎的・基本的な内容を厳選するゆとりと定着を図るゆとり、個性を生かせるゆとり)等に適切に配慮していく必要があるのである。
では、なぜ生きる力とゆとりの必要性が体育科教育に期待されるのかを考察していく。
まず、「生きる力」に、保健体育をどのようにアプローチするべきか、十分に検討する必要がある。「生きる力」の要素としては、「自ら学び、考える力」、「豊かな人間性」、「たくましく生きるための健康や体力」の3点が示されている。保健体育からのアプローチは、「たくましく生きるための健康や体力」に関するだけの短絡的な考えでとらえてはならない。
現代になぜ生きる力とゆとりが必要なのだろうか。はじめに、現代の子どもたちの生活の現状を考えていく。
現代の子どもたちの行動を見ていて感じるのは、生活体験不足、自然体験不足、基本的生活習慣の欠如、モラルの低下、社会性の欠如等である。まさに、教育の危機である。子どもたちの心身の問題は、複雑多岐にわたっている様に考えられる。家庭の実態を考えると、核家族化、単身赴任、過保護・過干渉、家族の教育力の低下が想像以上に進展しているのではと考える。また、地域社会をとらえると、都市化と過疎化の同時進行、地域住民の人間関係の希薄化等、子どもたちの健全な生活への有害な環境も進展している。地域の教育力の低下も問題である。その上、忙し過ぎたりするゆえに、子どもたちの生活にゆとりがないのである。
このような現状から、ゆとりのある教育活動を展開し、子どもたちに「生きる力」をはぐくむ教育が重視されてきたのである。豊かな人間性や社会性、国際社会に生きる日本人としての自覚の育成(他人、社会、ルールやモラル、我が国のこと、世界のことを意識できるゆとり)、多くの知識を一方的に教え込む教育を転換し、子どもたちが自ら学び自ら考...