雄の繁殖疾患
雄の繁殖疾患の分類
1) 交尾欲(性欲)減退症: 最も発生が多い。
2) 交尾不能症: 性欲はあるものの・・・。
3) 生殖不能症: 性欲や交尾・射精能力は
あるが、精液性状に問題が
ある場合。
交尾欲減退症
・発情雌に関心を示さない状態。
原因:
1. 不適切な飼育管理によるストレス
2. 栄養障害(過肥、削痩)によるホルモン分泌低下
3. 環境の急激な変化(ストレス)
4. 精神的な要因(いやな思い出)
5. 先天的な下垂体・精巣の内分泌異常
直接的な原因としては、androgenの分泌不足。
交尾欲減退症
治療法:
1. 飼育管理の改善、運動、日光浴(気分転換)
2. 飼料の改善(配合飼料の適した給与)
3. 安静、休養
4. ホルモン療法
GnRH-アナログ製剤、 hCG製剤、
テストステロン製剤 (PMSG併用も可)
交尾不能症
・原因として、勃起不能症の場合と四肢・蹄の
障害の場合とに分類できる。
勃起不能症
1) 先天的な原因(解剖学的な原因)
陰茎の発育不良、 陰茎湾曲症、
陰茎後引筋の異常、
包皮小帯の遺残、 包皮口の狭窄
勃起不能症
2) 後天的な原因
・事故による仙骨部位(勃起中枢)または
骨盤神経の損傷
・陰茎の打撲、損傷
・亀頭炎、包皮炎(不快感)
・陰茎の腫瘍(乳頭腫、犬の可移植性性器腫瘍)
・精神的な要因(いやな思い出)
四肢・蹄の障害
とくに、後肢の障害は、致命的(乗駕できず)。
交尾不能症の治療法:
1. 抗生物質やステロイド剤の投与
2. 休養・安静
3. 手術(腫瘍の摘出など)
4. 包皮腔内の洗浄
(5. 廃用処分)
性ホルモン剤の投与は、不適な例が多い。
生殖不能症
先天的な原因:
・精巣、精巣上体、副生殖腺などの形態的または
機能的な異常(生殖器の形成不全、潜在精巣、
精管の閉塞、性ホルモンの分泌異常など)
後天的な原因:
・感染性の炎症(精巣炎、精巣上体炎、精嚢腺炎
前立腺炎など)
・性ホルモンの分泌異常(老齢性、ストレスなど)
・腫瘍の発生(精巣腫瘍など)
生殖不能症
精液性状から疾患を分類する。
1) 無精液症
2) 精液減少症(乏精液症)
射精精液量が、平均の1/4以下であったり・・・
(牛の精液量が、平均8 mℓであるとして、
2 mℓの個体とか)
生殖不能症
3) 無精子症
射精精液中に、精子が全く存在しない場合
(たとえ、精巣で精子形成があったとしても・・・)
4) 精子減少症(乏精子症)
射精精子数が、平均の1/4以下であったり・・・
(牛の射精精子数が、平均60億であるとして、
15億以下の個体とか)
生殖不能症
5) 精子無力症(精子活力低下症)
活発に運動する精子の割合が、50%以下
・精子の形態異常
・精漿の異常(pHや浸透圧の異常)
6) 精子死滅症
生存精子の割合が、50%以下
7) 奇形精子症
形態異常を有する精子の割合が、20%以上
生殖不能症に対する治療法:
1. ホルモン療法
GnRH-アナログ製剤、hCG製剤、
テストステロン製剤(PMSG併用可)
2. ビタミンA、ビタミンEの経口投与
3. 炎症の治療
4. 安静・休養、ストレスの除去
夏季不妊症
・雄の牛、豚で認められる疾患。
・夏の高温・多湿のために、夏季の一時期に性欲
が低下すると共に、造精機能が悪化する。
原因:
動物舎〜高温・多湿、 風通しが悪い、 熱中症
野外〜日射病、 ブユ・カ・サシバエなどの
吸血昆虫による陰嚢炎・精巣炎
夏季不妊症の予防法:
1. 動物舎の風通しを良くし、大型扇風機を設置。
霧の噴霧、屋根に水。
2. 野外では、木陰のある場所をつくる。
防虫スプレーなどで、吸血昆虫を予防。
潜在精巣
・馬、豚、犬で発生が多い。
・遺伝性疾患。
・精子形成の欠如。
・セルトリ細胞腫の発生。
・androgenの分泌低下。
・片側性の潜在精巣であっても、繁殖に供しない。
犬の前立腺疾患
前立腺肥大症 (排便異常、排尿困難)、
前立腺囊胞(血尿)、 前立腺炎(疼痛あり)、
前立腺膿瘍(化膿性炎症、強い疼痛)、
前立腺癌(骨に転移)
1. 診断法:
レントゲン撮影、超音波画像検査、
直腸検査、精液検査、穿刺吸引(細胞検査)、
バイオプシー(組織検査)
犬の前立腺疾患
2. 治療法:
・精巣摘出手術
・抗アンドロジェン製剤の投与
・抗生物質の投与(血液-前立腺関門)
エリスロマイシン
エンロフロキサシン(バイトリル)
オフロキサシン(タリビッド)
・抗癌剤の投与
・精巣上体管の閉塞による精液瘤や精子肉芽腫
の発生(抗-精子抗体の形成)
・陰茎強直症(持続勃起症)
馬、犬、猫、人~亀頭部の海綿体が発達した
動物種で発生。
原因〜勃起中枢や骨盤神経の損傷
治療〜亀頭部に鬱滞している血液の排除
精嚢腺炎: 牛、馬、豚
診断法〜1. 直腸検査で疼痛あり
2. 精液検査
精子無力症、奇形精子症
膿精液症
精液pHの上昇(7.0以上)
治療法〜抗生物質の長期間投与
繁殖には、供しない