夜の寝覚め

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     異本と改作の違いは明確ではない。改作とは、原作に対し批判的な立場を持つという発言や、三谷榮一の様に、プロットを改変する積極的改作、歌を含め文章レベルの改変を行う消極的改作の二つにわけて呼ぶなど、様々な意見がある所から分かる。物語の書き換え自体は平安時代から行われ、鎌倉期初期の『無名草子』で『今隠れ蓑』の出現を積極的に奨励している。また、『とりかへばや』についても、『無名草子』では、古本と今本をそれぞれ独立した本として評価し、オリジナリティを問題にしていない。
     『夜の寝覚』は、平安時代の『夜の寝覚』を題材としている。鎌倉末期ないし室町初期あたりに成立したもので、現存写本は数える程度しか残っていない。原作『寝覚』は女主人公の心尽くしの人生を語った物語として高く評価された作品だった。ただ、欠損があり、全体像は推定に頼るほか無い。
     異本・改作の例として、『狭衣物語』『住吉物語』が挙げられる。前者は数百の異文があるが、そのほとんどは散文部分で、歌の異文はわずかにすぎない。後者は、多様な伝本があり、作中歌が最小一七から最大一二〇詠まれている。だが、最小一七首は詠みかえられず伝本の大多数に含ま...

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