『社会保障①』
「「国民負担率」について説明した上で、我が国における社会保障の財源と費用について述べなさい
『社会保障①』
「「国民負担率」について説明した上で、我が国における社会保障の財源と費用について述べなさい
「国民負担率」とは、租税負担(国税と地方税)の国民所得に対する比率である租税負担率と、社会保障負担(年金や医療保険など)の国民所得に対する比率である社会保障負担率との合計である(「財政構造改革の推進に関する特別措置法」(平成9年))。
租税負担には法人税が含まれ、社会保障負担には事業主負担分の社会保険料も含まれる。このため、国民負担率は、政府活動を支えるために民間部門が担う負担の程度を示すものである。つまり、この指標は、国民全体の公的な負担度合いを示すものであると共に、公的な社会福祉の充実度合いを示すものである。
国民負担率の推移について述べる。昭和45年度からは増加傾向にあって、平成元年度には38%にまで上昇した。その後はいったん下がった後、36~38%で安定的に推移した。平成20年度には過去最高の40.3%となった。平成24年度の国民負担率は、平成23年度から0.2%減少して39.9%となる見通しである。
近年増加していた要因としては、景気回復を受けた法人課税の増収による。本年度の減少の背景としては、景気回復に伴う国民所得の伸びに伴い、社会保障負担率及び租税負担率が減少することが挙げられる。
国民負担率は、低い方が国民にとって望ましいと考えられ、50%を上回らないような財政運営をすることが当面の方針とされている。
国民負担率は、均衡財政を前提とした指標であり、政府が国債発行の増加等を通じて財源を調達すれば、見かけ上の国民負担率を低く抑えることが可能になる。これは、日本の財政では既に顕著なものとなっているため、世代間の公平の考え方に鑑み、国民負担率に財政赤字対国民所得比を加算した「潜在的国民負担率」も併記する形で用いられることが多い。
平成24年度の潜在的国民負担率は、51.2%となる見通しである。平成23年度から3.6%減少するものの、引き続き50%を超える高い水準である。減少の主な要因としては、23年度は東日本大震災からの復旧・復興事業等を盛り込んだ累次の補正予算が組まれたこと、国民所得の伸びが挙げられる。
先進諸国では、国民負担率が低下する傾向にある。2005年度では、スウェーデンが71%、フランスが62%、ドイツが52%、イギリスが48%(2004年)、アメリカが35%(2004年)となっている。この年の日本は38%であり、国民負担率で見ると、日本は小さな政府といえる。日本は自己責任型の米国よりは高いが、高福祉・高負担のヨーロッパ諸国よりは低く、中福祉・中負担という見方が可能である。
続いて、社会保障の財源と費用について述べる。
社会保障の財源として収入総額は、104兆円である。項目別に見ると、社会保険料が54%、公費負担(税支出)が30%となっている。
社会保障の費用としては、統計として国立社会保障・人口問題研究所が公表する社会保障給付費がある。社会保障給付費は、社会保険や社会福祉などの社会保障制度を通じて1年間に国民に給付される金銭・サービス費用の合計額である。その推計は、国際労働機関が定めた基準に基づいている。
平成18年度の社会保障給付費の規模は89兆円である。その内訳を見ると、①年金47兆円(53%)、②医療28兆円(31%)、③福祉その他14兆円(16%)である。高齢者関係給付費が62兆円(70.%)、児童・家族関係給付費が3.5兆円(4%)を占める。
社会保障給付費はこれまで年々増加してきた。社会保障財源は、近年減少する年度はあったが、増加傾向にある。