『障害者に対する支援と障害者自立支援制度』
「「障害者自立支援法」について述べなさい」
『障害者に対する支援と障害者自立支援制度』
「「障害者自立支援法」について述べなさい」
2005年に成立した「障害者自立支援法」の第一条には目的として以下のように記されている。「この法律は、障害者基本法の基本的理念にのっとり、身体障害者福祉法、知的障害者福祉法、精神保健及び精神障害者福祉に関する法律、児童福祉法その他障害者及び障害児の福祉に関する法律と相まって、障害者及び障害児がその有する能力及び適性に応じ、自立した日常生活又は社会生活を営むことができるよう、必要な障害福祉サービスに係る給付その他の支援を行い、もって障害者及び障害児の福祉の増進を図るとともに、障害の有無にかかわらず国民が相互に人格と個性を尊重し安心して暮らすことのできる地域社会の実現に寄与することを目的とする。」
従来の支援費制度には以下のような問題点が指摘されていた。①身体、知的、精神という障害種別ごとに縦割りでサービスが提供されており、使いづらい仕組みとなっていること。また、精神障害者は支援費制度の対象外であること。②地方自治体によっては、サービスの提供体制が不十分であり、必要とする人々すべてにサービスが行き届いていないこと。③働きたいと考えている障害者に対して、就労の場を確保する支援が十分でないこと。④支給決定のプロセスが不透明であり、全国共通の判断基準に基づいたサービス利用手続きが規定されていないこと。
これらの制度上の問題を解決し、障害者が地域で安心して暮らせるノーマライゼーション社会の実現を目指して、「障害者自立支援法」は制定された。具体的には、以下のような目的があるとされる。①障害者施策の一元化、②利用者の利便性向上、③就労支援の強化、④支給決定のプロセスを明確化、⑤安定的な財源の確保
とりわけ、財源の確保は近年の財政難に鑑み制定されたもので、原則費用の1割負担が規定された。これは、それまであった支援費制度が財政を圧迫する性質のものであったことから、その対策を迫られたものであるとも言える。また、国の費用負担の責任の強化(費用の2分の1を負担)が規定されている。
「障害者自立支援法」により、サービス提供主体の一元化や各種福祉サービスが再編され各法律に該当する障害者は障害の種類を問わず、各自のニーズ、障害の程度に応じて公平にサービスを受けることが可能になった。具体的なサービスとしては介護給付費や訓練等給付費の支給が該当し、利用者は所定の手続きを経て審査の後認定されると、利用費の9割が市町村から支給される。そのため実質利用者のサービス利用費は1割ということになるが所得に応じた上限がある。
「障害者自立支援法」は、サービスの種類問わず利用者が1割を負担するという応益負担が利用者の生活を圧迫し、サービス利用の制限につながるとの批判もあり、障害者自立支援法違憲訴訟が起こされた。このような状況を受け、利用者の支払い能力に応じた負担を求める応能負担が原則となった。2011年に障害者基本法の改正が行われ、2012年5月に全面施行された。