高齢者に対する支援と介護保険制度

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    資料紹介

    『高齢者に対する支援と介護保険制度①』
    「認知症ケアの基本的考え方と実際について述べなさい」

    資料の原本内容

    『高齢者に対する支援と介護保険制度①』
    「認知症ケアの基本的考え方と実際について述べなさい」
     認知症の現在の患者数は、180万人前後と推定されている。年間発症率は、65歳以上で1~2%、80~84歳では8%になり、85歳を超えると急激に上昇するとされている。すでに65歳以上人口の10%(240万人程度)に達しているという意見もある。今後、高齢者人口の急増とともに認知症患者数も増加し、2020年には325万人まで増加すると予想されている。
     認知症とは、成人になってから、脳の神経細胞が何らかの疾患や障害などから損傷・萎縮などの器質的障害を受けて起こる病気の総称である。認知症には、①アルツハイマー型認知症と、②脳血管性認知症がある。①アルツハイマー型認知症とは、認知症をきたす疾患の中でもっとも多い。脳の神経細胞が急激に減ってしまい、脳が萎縮して、高度の知能低下や人格の崩壊がおこる。②脳血管型認知症は、脳の血管が詰まったり破れたりすることによって、その部分の脳の働きが悪くなるものである。障害された場所によって、ある能力は低下しているが別の能力は比較的大丈夫というように、まだら状に能力が低下する。記憶障害はひどくても、人格や判断力は保たれていることが多いのが特徴である。日本では、従来より血管性認知症が最も多いといわれていたが、最近はアルツハイマー型認知症が増加している。
     認知症の症状としては、判断力の低下、失行、見当識障害、記憶障害、失語などがある。このため、認知症高齢者の行動には常に危険が伴う。身体の不調や不快感を自分で適切に伝えることができないため、さわぐ、徘徊、不潔行為といった問題行動で表現する。介護者は、規則正しい生活リズムになるよう援助するなかで、早い段階で身体の異変などを見つけ出す観察力と適切な判断力が必要となる。認知症のケアには、身体面のケアと精神面のケアという2つの側面が必要となる。
     認知症は、周辺症状別に見ると、①葛藤型、②遊離型、③回帰型の3つのタイプに分けられる。
     ①葛藤型は、目の前の状況を正しく理解・対応することができず、それに対する葛藤の表現として、異常な反応・行動を起こすタイプである。彼らに対するケアは、介助者が自分の都合や偏見に囚われずに本人の欲求を理解することが大切になる。それに加えて、孤独からくる不安をいかに解消するか、ということが重要なポイントになる。
     ②遊離型は、葛藤型とは反対に、目の前の状況に対して全く反応を見せないタイプである。何かのきっかけで感情や表情を取り戻すことがあり、そのきっかけは、過去の生活でなじみがあったものであることが多い。彼らに対するケアは、このきっかけをいかに発見し活用するか、ということが重要なポイントになる。
     ③回帰型は、若い頃にタイムスリップしたかのような行動をとるタイプである。回帰型の認知症の人に対するケアは、本人の「古き良き時代」がどのようなものであったのかを理解して、それに付き合うこと、つまり同行ケアである。
     認知症の治療薬は、基本的にアルツハイマー病に対するものであり、脳血管性認知症自体を対象にする薬剤はない。アルツハイマー病には、塩酸ドネペジルなどコリンエステラーゼ阻害薬が有効とされるものの、あくまで対症療法薬であって、多少進行を抑えるにすぎない。このため、効果的な非薬物療法により薬物療法を補って治療効果を高める必要がある。認知症への心理・社会的な治療アプローチは、認知、刺激、行動、感情、の4つに分類される。デイケアなど各種の非薬物治療も有効であり、日々の介護で心身ともに疲れきっている介護者への介護という視点も大切である。

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