社会理論と社会システム

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    『社会理論と社会システム』
    「現代社会における「社会問題」に関するトピックを示した上で、その問題を社会学の用語を使って説明しなさい」 

    資料の原本内容

    『社会理論と社会システム』
    「現代社会における「社会問題」に関するトピックを示した上で、その問題を社会学の用語を使って説明しなさい」 
     日本社会における家族機能の低下について、社会問題として捉えることとする。
     社会学の領域において比較的広く用いられている家族の定義は、次の通りである。「家族とは、夫婦関係を中心として、親子、兄弟、近親者によって構成される、第一次的な幸福追求の集団である。ただし、これらの要件をすべて充足する必要はなく、夫婦の一方を欠く父子のみや母子のみであっても、親又は子あるいは双方を欠く夫婦のみであっても、血縁関係を欠く養親子であっても家族に含まれる」
     アメリカの文化人類学者マードックは、家族の基本的な単位は、夫婦と未婚の子からなる核家族であるとし、それには基本的な4つの機能があると述べた。それらは、①性的機能(夫婦間の性的欲求の充足および規制を担う)、②経済的機能(共住共食および性にもとづく分業としての経済機能)、③生殖的機能(子供を産む)、④教育的機能(子どもを世話して一次的社会化をする)である。
     この理論に対して、パーソンズは、近代社会においては上記4つの機能は核家族固有の機能とはいえなくなったと述べた。産業社会では、生産活動は企業が担ったり、教育機能は学校教育が担当するように、家族外のシステムが専門分化してきた。その結果、核家族本来の機能は、「子どもの一次的社会化」と「成人のパーソナリティの安定化」であるとされる。前者について述べると、それは、幼児期・子ども期の躾を通じてパーソナリティの核を形成する営みである。家族は、子供が生まれて初めて所属する集団であり、生活のほとんどの部分をそこで過ごすため、一生を通じて変わることのないパーソナリティの基礎的部分が家族のなかで形成されることとなる。子供にとって、家族はたいへん重要な意味をもつ。
     家族の形態に関して、先進国では、家族の小規模化・核家族化・シングル化が進んでいる。シングル化は、家族に関するライフスタイルの多様化によって一人暮らしの意味それ自体が変化したことを示している。単身世帯は長らく、未婚の青年世代が大多数を占める家族予備軍とみなされがちであったが、現在では様々であり、未婚の中高年・配偶者と離別した人・死別した高齢者等が含まれる。近年のシングル化は、未婚化・晩婚化・離婚増加・高齢化などが作用した結果であると考えられる。
     人々は、従来の家族規範に縛られずに、主体的にライフコースを形成することがある程度可能となった。先に述べた家族の機能の外部化も同時に進行している。それは、社会の自由度が増し、人々は家族の楔から開放されたということであるが、これによる問題も発生している。例えば、幼児虐待などがマスコミによって報道されているとおりである。
     自由と制約は天秤のような関係であり、今後は制約を強めることが世論的に求められる方向性となりうる。虐待のような問題への対処としては、法律の整備や行政のしくみによる対策は行ってしかるべきであり、必要な社会的コストであろう。しかしながら、その効果はある程度までのものである。保守的な倫理観の教育に関しては、家庭内で実施されるのであれば効果はあろうが、教育機能の外部化が進んだ現代では絵に描いた餅のようなものだと思われる。
     家族関係は、テクノロジーの発展とともに、今後ますます希薄なものとなろう。家庭内の子どもはインターネットによるコミュニケーションに多くの時間を費やすようになり、家族間で過ごす時間は減少していることと想像される。これは家族制度の崩壊の序曲というよりは、家族自体が問い直されることの継続だと思う。血縁や婚姻による濃い関係のみならず、知人との広く薄い関係も、「成人のパーソナリティの安定化」という先にあげたパーソンズの機能となっているのであれば、家族関係と認定することも可能ではなかろうか。

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