『福祉サービス組織と経営』
「福祉サービスに係る組織や団体について述べなさい」
『福祉サービス組織と経営』
「福祉サービスに係る組織や団体について述べなさい」
「社会福祉基礎構造改革」により、福祉のサービスは措置制度から、利用者が事業者と対等な関係のもとで契約により提供されるシステムへと、大きくシフトすることとなった。1990年の社会福祉事業法改正の際、「福祉サービス」という言葉が初めて使用されるようになった。
「福祉サービス」の基本理念は、社会福祉法第3条では、「個人の尊厳の保持を旨とすることとし、その内容は利用者の健全な育成、能力に応じ自立した日常生活の支援」とされている。そして、サービス自体が良質で適切なものでなければならないとし、その確保のために第78条には事業者自身による福祉サービスの質の評価に対する努力義務規定を設けている。また、サービス評価が客観的公正で利用者のサービス選択に資する情報となるよう、国に対し、第三者評価の仕組を整備し事業者の自主的・積極的なサービスにおける質の向上の取組みを支援し、促進する責務を課している。
「福祉サービス」に係る組織や団体として、法人の基本形態として、公益法人・財団法人・社団法人がある。
「福祉サービス」提供主体の類型としては、①都道府県・市町村が直営する行政型、②社会福祉法人が経営する認可型、③福祉公社方式の行政関与型、④農協・生協・民間非営利組織やボランティア団体の参加型、⑤民間事業者の市場型といった5つがある。
私は、社会福祉法人に所属する職員として現在働いている。そこで、とくに社会福祉法人に焦点を当てて述べることとする。
社会福祉法人とは、社会福祉法の規定に基づき、社会福祉事業を行うことを目的として設立された法人である。社会福祉事業には、第二種と第一種が存在する。
第一種社会福祉事業は、利用者への影響が大きいため、経営安定を通じた利用者の保護の必要性が高い事業である。経営主体は、行政及び社会福祉法人が原則である。生活保護法に規定する救護施設、児童福祉法に規定する児童養護施設、老人福祉法に規定する養護老人ホームなどがあり、主として入所施設サービスである。
戦後、社会福祉法人が社会福祉事業の主たる担い手と位置づけられてきた。時代の変化とともに、社会福祉法人のありようは変化している。
1951年に社会福祉事業法が制定されたときには、社会福祉事業は援護、育成、更生の福祉サービスの給付であること、社会福祉行政の第一線機関として福祉事務所を設置することなどが定められた。社会福祉事業のために行う支出は行政機関が決定する措置制度によることし、その運営は行政機関か社会福祉法人が行うこととされた。
近年、社会福祉の分野においては、地方分権化、社会福祉基礎構造改革、施設から在宅へ、措置制度から契約制度へ、少子高齢化の進展、地域社会の変化、といった様々な要素がある。地方分権化が図られ、地域福祉の推進が法制化された。2000年に、社会福祉法のなかで、地域福祉ということばが初めて登場し、地域福祉の推進が記されている。その主体としては、地域住民、社会福祉を目的とする事業を経営するもの、社会福祉に関する活動を行うものと大きく3つに分けられ、従来よりも広範囲となった。これにより、社会福祉法人には、地域福祉の推進に努めるべき責務が定められた。
施設利用が措置制度から契約制度へ移行されたことに伴い、施設内の苦情解決システムの整備や契約締結時における重要事項説明などの書面の交付、福祉サービスに関する自己評価や第三者評価の導入などが求められることとなった。措置制度から契約制度への移行は、社会福祉法人の性格や経営のあり方に大きな変化をもたらすこととなった。財政的な安定のための経営努力、他法人との経営協力など、新たな法人経営の取り組みが求められるようになった。