日常生活において、人との係わり合いはわれわれにさまざまな利益をもたらすものであるが、同時に、大きなストレスをももたらす。人の対立を対人葛藤とよぶが、これは、「心の中に相反する欲求が同時に起こり、そのどちらを選ぶか迷うこと」と定義される。この定義によれば、葛藤を知覚した個人は、自己を被害者と認知すると考えられる。このような状況では、自己を被害者であると認知している個人は、相手に対して怒りを感じ、攻撃的に対応するであろう。そして、このような報復的な応酬は葛藤をさらに激化させる。Rubin,Pruitt,&Kim(1994)は、このように葛藤が激化していく過程を葛藤スパイラルと呼んだ。
このようなスパイラルを導く要因はなんであろう。それは、マグニチュードギャップと被害者バイアス(Baumeister,1997)だと考えられる。マグニチュードギャップとは葛藤当事者が、自己が相手に与えた被害より自分が受けた被害を過大視する認知傾向のことである。現実の葛藤は、どちらか一方が被害者でどちらか一方が加害者というように役割が分担されるのではなく、一方が両者の役割を担っていることが多い。人々には自分に与えられた被害をより深刻に、かつ、自分が与えた被害をより軽く知覚する傾向がある。このような知覚は自分の方が被害者であるという、歪んだ自益的認知を反映しおり、被害者バイアスという認知的パイアスを生じさせる(Stillwell&Baumeister,1997)。このような認知バイアスによって被害者となった当事者は、自分は被害者なのだから、相手から謝ってほしいとか、やり返してやりたいなどと望むようになる。そして、当事者がお互いにこのバイアスにとらわれている限り、宥和的な働き賭けが生じにくくなる。それゆえ、マグニチュードギャップと被害者バイアスは葛藤の激化を導く要因であると考えられる。
心理学実験
レポート
マグニチュード・ギャップと責任帰属
目 的
日常生活において、人との係わり合いはわれわれにさまざまな利益をもたらすものであるが、同時に、大きなストレスをももたらす。人の対立を対人葛藤とよぶが、これは、「心の中に相反する欲求が同時に起こり、そのどちらを選ぶか迷うこと」と定義される。この定義によれば、葛藤を知覚した個人は、自己を被害者と認知すると考えられる。このような状況では、自己を被害者であると認知している個人は、相手に対して怒りを感じ、攻撃的に対応するであろう。そして、このような報復的な応酬は葛藤をさらに激化させる。Rubin,Pruitt,&Kim(1994)は、このように葛藤が激化していく過程を葛藤スパイラルと呼んだ。
このようなスパイラルを導く要因はなんであろう。それは、マグニチュードギャップと被害者バイアス(Baumeister,1997)だと考えられる。マグニチュードギャップとは葛藤当事者が、自己が相手に与えた被害より自分が受けた被害を過大視する認知傾向のことである。現実の葛藤は、どちらか一方が被害者でどちらか一方が加害者というように役割が分担され...