単元Ⅳ 「現代と法」
■テーマ 『日本国憲法の今日的意義について考察せよ』
1,
はじめに
憲法はその国の最高法規といわれているが、自分自身その内容についてあまり詳しく理
解していない。中学生の頃、社会科の授業で学習したこと以外、勉強した記憶もない。そ
れほど憲法は身近な存在ではないという事か。そこで憲法の意義を考える前に憲法制定の
歴史について触れておく。
今から70年前、日本は大日本帝国憲法の下、戦争の真只中にあった。そして数年後ポ
ツダム宣言を受諾し、長く悲惨であった太平洋戦争が終結する。ポツダム宣言は日本に対
し、軍国主義の排除・民主主義の確立・基本的人権の尊重を要請していた。裏を返せば日
本という国は、軍国主義で天皇主権であり国民の権利などは存在しなかったということで
ある。それでも敗戦がきっかけとなり、連合国総司令部の主導で現在の日本国憲法が作ら
れたわけだが、当時の国民にとっては驚きや戸惑い、そして何より期待が大きかったこと
は容易に想像できる。日本はこの憲法があったからこそ、戦後の復興と目覚ましい発展を
遂げたのであろう。
日本国憲法には、前文にも記述されているように3大原理が存在する。基本的人権の尊
重・国民主権・平和主義である。これらはポツダム宣言が要請していた内容そのもので、
これらの3大原理について今日的意義を考えてみる。
2,
「基本的人権の尊重」
人権とは、人が生まれながらにして有する侵すことのできない権利という概念が一般的
だ。日本国憲法でいう基本的人権とは、自由権・参政権・社会権に大別される。自由権に
は精神的自由、経済的自由、人身の自由がある。参政権はその名のとおり、政治に参加す
る権利である。社会権は経済的弱者を救うために国家の積極的な施策等を要求する権利と
して、生存権や教育権、勤労権などがある。このほかに包括的基本権や請求権などが基本
的人権に含まれる。このような基本的人権に含まれる意義とは何か。
近年ではモンスターペアレントやニートといった自己中心的で、社交性の無い人々が増
えてきている。個人の人権は間違いなく尊重されるべきであるが、その個人の主張の為に
公共の福祉に反したり、他人が迷惑を被ったりすることがあってはならない。このような
人々は、憲法の規定を前面に押し出して自己主張しているわけではなかろうが、社会では
すべての人々の人権が平等に尊重されなければならないという事を理解してほしい。自分
の権利ばかりを主張し、他人の尊重や納税などといった義務を果たせないようでは、社会
は崩壊してしまう。現代はその中に足を一歩踏み入れた感がある。
戦後復興や高度成長期の国民はそれぞれが義務を果たし、権利を主張しながら幸福を得
ていたのだと思う。日本国憲法の下、法律が整備され平和で安全な社会があったからこそ、
発展を続けてこられたのだとも思う。基本的人権の尊重という原理が基となって今の日本
があるという事を思い出し、権利と義務を明確にすることで、我々は基本的人権の尊重の
意義を再認識することが出来る。
3,
「国民主権」
主権という概念は、中世の封建社会から絶対君主制がつくられていく過程で登場したと
考えられている。君主が自らの権力を正当化するために、主権という概念を創り出した。
そこでは主権は国を治める統治権を指している。統治権は、立法権・司法権・行政権の三
権を掌握する国家権力そのものであった。このようなことを対外的にアピールすることで
国王は絶対君主制を正当化した。近代に入り絶対君主制が否定されてくると市民や国民が
政治を行うようになってきた。ここで主権は国王にではなく市民や国民にあるという意識
が生まれ、主権の意味も統治権というよりも国の政治の有り方を決定する力や権威という
ように捉えられるようになった。そうして国民主権といった概念が生まれたのである。
日本国憲法が定める国民主権の原理は、国政の最高決定権が国民にあるという事だが、
自分の感覚では、政治家主権という方がしっくりとくる。日本は国民が選挙によってその
代表者を選ぶ間接民主制が採用されているから主権は国民にあるといえるわけだが、最近
の政治家の感覚は国民感覚とあまりに乖離していると言わざるを得ない。政治のパワーゲ
ームよりも国民の代表としての自覚を持って国政運営にあたってもらいたい。また国民も
真剣に選挙に参加すべきだ。そうすることで、国民主権の持つ意義が理解できるようにな
るのではないだろうか。
4,
「平和主義」
日本国憲法は他国に例を見ない平和主義を貫いている。これは憲法の詳しい内容を知ら
ない自分でも、頭に入っている。義務教育を受けた人ならばおよそすべての人が同じ感覚
であろう。しかしながら、その崇高な理念とは別に憲法第9条に於いては、さまざまな解
釈や議論がなされている。政府見解によると、自衛隊は自衛のための最小限の実力しか持
っていないので戦力には当たらず、憲法違反ではないとしている。これについても相当な
議論がなされているが、今はそんな水掛け論を展開するよりも平和主義の原点に立ち返り、
諸外国との対話を大事にして、外交交渉による侵略の未然防止に努め武力無き自衛を行っ
ていくことが大切なのではないか。この意見に対しても様々な意見があろうが、平和主義
の持つ意義を考えたとき、武力は無い方が良いのは明らかである。
最後になるが、私は平和と幸福に関する概念は70年前も今も変わっていないと思う。
そうであるならば、憲法解釈の相違や改正議論の前にすべきことは、憲法制定当時の理想
を見つめ直し、原点に立ち返ることが大事であると考える。
参考文献
大人の参考書編纂委員会『大人の参考書「日本国憲法」がわかる!』㈱青春出版社 2002 年
高野泰衡『入門の法律 図解でわかる憲法』㈱日本実業出版社 2008 年
蓮見清一『施行60年!ビジュアル日本国憲法 見つめ直そう!
わたしたちの原点 別冊宝島』㈱宝島社 2007 年