マス・メディアによる報道は、第一義的に国民の「知る権利」に奉仕するものであり、民主主義存立のために「真実の伝達」が責任として課されている。しかし、メディアが正確な情報を伝えようとすれば、個人の名誉権やプライバシー権と衝突し、両者の調整を迫られる場面が少なくない。
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「報道の自由とマスメディア」
マス・メディアは、市民のために、立法、行政、司法の各分野を十分に監視し、また、環境、
福祉、労働、消費者問題などの社会経済上の諸問題についても広く取材し、市民が必要とする情
報を報道することを期待されている。市民の知る権利に応えるべく、政治的分野でも社会経済的
分野でも、 大きな役割を果たしてきた。また、冤罪事件、
各地の公害事件、各種の消費者事件などにおいて、積極的な取材・報道を行い、世論形成に大き
な影響力を及ぼし、市民の人権を守ることに一定の貢献をしてきた。しかし、これまでマス・メ
ディアは、権力機関の監視と真実追究という期待された役割を十分に果たしてきたとは必ずしも
情報操作などにより、本来ジャーナリズムに期待された取材・報道の実践が十分に行われず、む
しろ、権力による誘導・情報操作に対する警戒を怠ったまま、取材・報道に追われている側面が
ある。
現代の日本では、新聞、テレビ、ラジオ、週刊誌など、あらゆる形態のメディアが多数併存し
ており、こうしたさまざまなメディアでは毎日、政治・経済・社会・文化・スポーツ・芸能など多種
多様な事項が...