他者とは何かという問題を考えたときに、一般的には単にそれは「他文化に生きる人」という認識であるかもしれない。その習慣や宗教、考え方や捉え方など文化という大きな一枠のなかにある細かいことまでも、そのほとんど全てにおいて自分や自文化の者とは別の者であるということのように感じられる者のことを指すと思うのではないだろうか。しかし、実際はその人物が形成した「自己」を知り、認めるということで見えてくる「他者性」というものが他者像になるのではないかと考えた。この他者像というものについてヌアー族という部族を例に挙げて考察を行う。
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他者像とは何か
他者とは何かという問題を考えたときに、一般的には単にそれは「他文化に生きる人」という認識であるかもしれない。その習慣や宗教、考え方や捉え方など文化という大きな一枠のなかにある細かいことまでも、そのほとんど全てにおいて自分や自文化の者とは別の者であるということのように感じられる者のことを指すと思うのではないだろうか。しかし、実際はその人物が形成した「自己」を知り、認めるということで見えてくる「他者性」というものが他者像になるのではないかと考えた。この他者像というものについてヌアー族という部族を例に挙げて考察を行う。
ヌアー族とは牛の飼育を中心に生活し、乳製品を主食とする牧畜民であるが、トウモロコシの栽培も行う部族である。彼らの最も大きな特徴と呼べるものは「牛」である。彼らは牛に対して驚くほどの執着を見せる。これは彼らが本質的に牧畜民であるからというものであるが、彼らは生活のほとんどを牛に頼っており、牛に関しては命と引き換えにでも守るべきものという認識まであるように思われる。牛は彼らにとって生活の一部というもの以上の存在なのであろう。この本でも第一章を「牛に生きる人びと」と...