社会福祉援助技術論3
社会福祉における援助活動の意義について
人間社会では、いつの時代においても他者から保護を必要とする人が存在し、一方では積極的に援助の手を差し伸べ、援助行為をする人がいる。社会福祉援助活動は、このような行為が長い年月を経て蓄積され、体系化されていった。
わが酷では、憲法第25条「すべての国民は健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を有する。国はすべての生活部面について、社会福祉、社会保障及び、公衆衛生の向上及び、増進に努めなければならない」という理念に基づき、国民はすべて最低限度の生活が保障されており、公的な責任を持って組織的、体系的に行う社会的な仕組みとして社会福祉制度を設けている。社会福祉援助活動は社会福祉に関する法令に基づき実践されている。
社会福祉活動とは、社会福祉制度の体系の中で社会福祉サービスの提供を通じ個人が豊かな社会的生活を送れるように援助することである。個人の生きがいや生活のはりあいを失わせることなく、よりよい社会福祉援助活動がなされるためには、法制度や社会資源を整備拡充することを引き続き努力していくことが求められる。
かつて日本が経済的、物質的に恵まれていなかった時代では、社会福祉は貧困者、障害者、婦女子、病者、高齢者といったいわゆる社会的弱者を対象として機能してきた。しかし、戦後高度経済成長を果たしてきた今日、国民の大多数は経済的にも物質的にもゆとりが出て着た。さらに人口の少子高齢化などによる社会構造の変化、生活様式や生活意識の変化によって物資的、貨幣的ニーズよりももっと高次元の文化的非貨幣的ニーズが高まってきている。
これからの社会福祉は、特定の人たちだけを対象とするのではなく、全国民を対象とし、高齢になっても自立して生活できるように新しい社会福祉援助を構築、強化することが望まれている。このようにすべての個人の人間としての基本的ニーズを充足してこそ社会福祉援助活動の意義がある。また、公的責任による社会福祉制度体系が整備されても不完全なものであり、社会変動による生活構造の変化などは、常に新たな個人的、家族的、地域的な福祉の必要性を生起させやすい。そこで、ソーシャルワークが権利の主体としての個々の人間福祉を高め、守っていくために、制度や価値観の変革を含み、顕在化、啓発化、改良化、活性化の諸機能を十二分に発揮していくことが極めて重要である。
社会福祉における援助過程の展開について述べよ 仕組みと構成含む
直接援助技術とは、社会福祉の目標を利用者の生活の中に、直接しかも、個別的、対人的に実現しようとする援助活動のことである。
個別援助技術は、リッチモンドの定義が出発点である。
クライエントとワーカーの対人関係を軸に、クライエントの問題が、社会福祉機関に持ち込まれる段階であるインテーク、そして、インテークの結果、その問題を取り上げることが決まると調査の段階に進む。調査はクライエントを取り巻く社会環境についての事実の収集で、第一にクライエントの意思を尊重して行うことが重要である。次は、調査によって収集された事実を整理、分析して援助の見通しを立てる診断で、ワーカーの実力がと荒れる段階である。そして、社会福祉実践活動の総称である介入で、問題解決の焦点をどこに置くのか、クライエントに直接働きかけその適応能力を高め、解決への動機づけ自助能力の育成を援助する過程である。
集団援助技術は、対象となる人々の課題解決能力を集団援助活動の場面を通じて援助する技術で、グループメンバーがさまざまな経験を通して、個人の成長と発展を図り専門家の援助によって社会的な目的を目指して実践される。その援助には、準備期→開始期→作業期→終結期がある。
地域援助技術は、地域社会の中で生じる様々な社会問題を住民生活によって組織的に予防・解決し、望ましい地域社会へと変えていくことを目標とする技術である。そのために、地域の特性や歴史、アンケートによる住民意識の調査などから、住民に共通する問題を発見し、解決のために事業・組織・財政の計画を立て、それを実施するために広報活動をし、計画実施のために協力体制を確立するものである。
社会福祉調査法(ソーシャルワーク・リサーチ)…社会福祉事業の現地調査によって、直接観察し記述する過程である。
社会福祉運営管理(ソーシャル・ウェルフェア・アドミニストレーション)…地域社会のニーズに合っている社会福祉行政・施設などの合理的運営、管理の技術、地域社会を診断し、解決可能な問題を選び、その解決の必要性を広く広報し、施設や地域社会の協力を求め、解決のための計画を作る。そしてその計画の達成度を評価するものである。
社会福祉計画法…地方自治体や地域社会の各機関や団体など組織が中心となって社会福祉を推進するために策定する計画である。
これらが、社会福祉における援助過程の展開である。
社会福祉専門職の専門性の構造について述べよ
社会福祉の専門性は、援助担当者の①福祉倫理②専門知識③専門技術の3要素で成り立つ。
①福祉倫理・・・社会福祉援助活動をする職員は、日本国憲法に定められている基本的人権を尊重し、各個人の人格の尊厳を尊重することが必要である。また、個人的な先入観や価値観だけで利用者を判断するのではなく、「人権尊重」「自己実現」「利権擁護」などの福祉的価値を明文化した、倫理要綱を判断基準や行動の指針とするべきである。福祉倫理の専門性を向上させるためには、日本国憲法や福祉六法をはじめとする法律の精神や基本理念を十分に理解し、職務の中に反映させることが求められる。
②専門知識・・・社会福祉は、社会福祉の歴史、理論、制度、知識、または児童、家族、高齢者、障害者などの対象者を理解するための専門知識はもとより、医学知識、会議技術、法学、心理検査法などの利用者の置かれている状況や人間を、より深く理解するための専門知識も求められている。
③専門技術・・・社会福祉は、援助方法、援助技術、援助技能の習得が要求される。その社会福祉援助技術には直接援助技術と間接援助技術がある。直接援助技術は、個別援助技術と集団援助技術、社会福祉調査法、社会福祉運営管理、社会福祉計画法、社会福祉活動法などの技術がある。
②と③の体系的理論は、同情や憐れみといった援助する側の一方的な思い入れを根拠に援助するのではなく、利用者にとって真に必要なニーズを明らかにして有効で公平な援助がおこなわれる条件になる。
以上のように福祉の方法は、援助活動によって実践される。
近年、援助活動においては、社会福祉士、会議福祉士の資格制度を作り専門の資格として社会的に広く認められるようになっているが、専門職としての権威を得るためには、今後の実際の援助活動の質が問われるものと考えられる。
これらが社会福祉の専門性の構造である。