○わが国の高齢者施設の体系(種類・特徴・対象者・入居手続き等も含む)を説明せよ。 (1)有料老人ホーム…「老人を入所させ、入浴、排泄、若しくは食事の介護、食事の提供又はその他日常生活上必要な便宜であって厚生労働省で定めるものの供与をする事業を行うものであって、老人福祉施設、認知症対応型老人共同生活援助事業を行う住居その他厚生労働省で定める施設ではないもの」
・有料老人ホームは施設の設置に規制がなく、民間企業が参入し3類型に分類されます。 ①介護付有料老人ホーム ②住宅型有料老人ホーム ③健康型有料老人ホーム
(2)特別養護老人ホーム 略して「特養」 特別養護老人ホームは、要介護1以上の方が利用できる、長期入所生活施設です。 設置運営は地方公共団体または社会福祉法人に限られます。公費の援助を受ける点も特徴。
(3)介護老人保健施設…「介護老人保健施設の人員、施設及び設備並びに運営に関する基準」第1条の基本方針で、次のように定められています。 「介護老人保健施設は、施設サービス計画に基づいて、看護、医学的管理の下における介護及び機能訓練その他必要な医療並びに日常生活上の世話を行うことにより、入所者がその有する能力に応じ自立した日常生活を営むことができるようにするとともに、その者の居宅における生活への復帰を目指すものでなければならない」 介護老人保健施設は、医療機関と家庭とを結ぶ「家庭復帰施設」で、リハビリテーションに力を注いでいます。特別養護老人ホームが長期入所の生活施設であるのに対して、介護老人保健施設は、家庭復帰を目的とした一時的に入所する施設です。 (4) 介護療養型医療施設…介護療養型医療施設の基本方針は、次のように定められています。「長期にわたる療養を必要とする要介護者に対し、施設サービス計画に基づいて、療養上の管理、看護、医学的管理の下における介護その他の世話及び機能訓練その他の必要な医療を行うことにより、その者がその有する能力に応じ自立した日常生活を営むことができるようにするものでなければならない」
(5)グループホーム…グループホームの正式名称は、「認知症対応型共同生活介護」です。 認知症対応型共同生活介護は、介護保険法第7条第15項で定められています。 「要介護者であって、認知症の状態であるものについて、その共同生活を営むべき住居において、入浴、排せつ、食事等の介護その他の日常生活上の世話及び機能訓練を行うこと」 ・グループホームは、認知症の高齢者が、1ユニット5人〜9人で共同生活を営む住居です。 スウェーデンなど北欧諸国で、小規模、少人数の生活環境を提供する試みから、大規模な施設では見られなかった認知症高齢者の潜在力が引き出されることがわかり、グループホームの設立が促進されました。 (6) ケアハウス…ケアハウスとは、自炊ができない程度の身体機能の低下がある高齢者や、在宅で独立して生活するには不安のある、家族の援助が困難な状態にある高齢者が入所できる契約型の施設です。 ケアハウスでは、食事や入浴など生活支援サービスを受けることはできますが、 介護サービスが必要になった場合には、介護保険の居宅サービスを利用することが一般的。
②わが国における在宅福祉の歩みを説明せよ。 5月午後
日本において、在宅福祉サービスが注目され始めたのは、1970年代の中ごろであった。それ以前は、介護などの直接サービスを必要とする利用者に対しては、施設入所中心の援助が行われていた。各種の福祉サービスの基盤整備は国の責務と考えられていたが、福祉サービスの適用は自助努力や家族・親族の扶養・支援が受けれない人たちに狭く限定され、そのための差ビスは量的な拡大がしにくい状況にあった。
国民としての最低限度の生活水準の保障であるナショナルミニマムを支える福祉サービスの水準確保の論議は、市民レベルの最低限の生活水準であるシビルミニマム論議へと発展していくが、1970年代以降の低成長経済の中で十分に根付かなかった。
福祉サービスの関心が「在宅福祉」に向けられていくのは1979年の「在宅福祉サービス戦略」の出版と前後する。従来から制度としてあったホームヘルプサービスに加え、ショートステイ事業、デイサービス事業が開始され、のちに在宅3本柱と称されるサービスの枠組みがそろうのがこの時期である。
1980年に入り、住み慣れた地域社会で暮らしたいという国民の願いや国際障害者年を契機として、本格的に紹介されるようになったノーマライゼーションの考え方の浸透などから、地域で暮らし続けることへの関心が高まってきている。
実際に各種サービスメニューが量的に整備されてきたことに大きく関係したのが、ゴールドプランの策定である。高齢者社会の到来に対する社会資源の基盤整備を含めた社会システムの整備が緊急の課題となってきた1980年代、国は厚生・自治・大蔵三大臣の合意のもとに、高齢者保健福祉10カ年戦略1989年を策定した。
ゴールドプランは、全国の市町村老人保健福祉計画が出そろった1994年に新ゴールドプランへと改編され、基本理念の明記、プラン全体の目標値の拡充と新たなサービスメニューの追加が行われた。そして新ゴールドプランが終了し、介護保険制度の導入をにらんだ。1999年には新たに5年計画のゴールドプラン21が制定された。
これらが在宅福祉サービスの歩みである。
③高齢者に対する権利擁護の仕組みや関連制度などについて記述せよ。7月午前
④高齢者に対する相談援助の進め方について説明せよ。 7月午後
高齢者の相談援助の進め方として、①インテーク②アセスメント③援助計画の立案④援助計画の実行⑤評価・終結の段階を経て進む。
①インテーク・・・受理面接ともいわれ、通常1~2階の面接によって行われるが、ソーシャルワーカーとクライエントが初めて出会い信頼関係が始まる非常に大切な段階。
・高齢者の場合は、初回面接が家族が多い。
・介護が必要な高齢者の場合、保健、医療、福祉などが関わって対応する必要がある。
・必要があれば、他機関への紹介や必要な情報提供などを行う。
②アセスメント・・・個人やその人を取り巻く環境を評価することであり、クライエントの抱える困難やニーズを把握するために情報収集を行い状況分析を行う。
・高齢者の心身状態だけでなく、個人の価値感を大切にしながら行うことが重要。
・生活歴、職歴、病歴などの過去の情報も必要
・周囲の環境、家族、近隣、住宅、サポート体制、活用している社会資源などの情報収集が必要
・悪いところや欠陥、問題点ばかりをみるのではなく、良いところや残っている能力に着目することが大切。
③援助計画の立案・・・アセスメントによってニーズの把握を行い、具体的な計画を立案していく段階である。
・ソーシャルワーカーの考えを一方的に押し付けず、クライエントの考えを計画に反映できるように援助することが大切。
・クライエントのが自分たちで困難を解決していく力を見極め、その力を発揮できるように援助することが大切であり、活用できる社会資源の把握が重要である。
④援助計画の実行・・・立案した計画を実施に移す時期である。その方法には2つあり、利用者自身に働きかける方法と環境に働きかける方法である。
・社会資源は制度やサービスだけでなく、援助者のネットワーク、本人や家族の持っているネットワークなどを含めたすべての社会資源を活用しながら解決し、人間的な生活の保障を行っていくよう援助する。
⑤評価・終結・・・ワーカーやクライエントが行ってきた結果を評価するものである。
・計画通り進行したのか、目標はどこまで達成できたのかなどを本人、個族、関係者を含めた評価を行うことが大切。
・目標が達成できていない場合は、際アセスメントを行い計画を立て直すなど柔軟に対応していくことが大切である。
これらが高齢者への相談援助活動である。
○高齢者への援助技術
個別援助技術
高齢者やその家族が社会生活上で直面する様々な問題の解決を個別に援助していく場合に用いられる援助方法である。
①高齢者の多様性を理解し、一人一人の個性を尊重する。
②高齢者の過去を知ることで現在を理解し、将来をともに考える。
③残存能力の維持・回復をはかり、高齢者の自立を支援する。
④高齢者や家族双方の生活の質を維持させていく複眼的視点の必要性
⑤施設入所や転居に際して、高齢者の生活の継続性を確保する配慮
⑥生命・生活の維持、向上
⑦利用者の意思と自己決定を尊重
集団援助技術
グループを作って、個々の高齢者に対して有意義な「グループ体験」を提供することを目的とするのが集団援助技術。
その基本視点は
①意図的にグループを組織し、グループ参加者の相互援助の関係を作る
②人間関係、社会性の回復をはかる
③望ましい人間関係をもつことで、身体的、精神的な機能を高める
地域援助技術
日本の高齢者福祉は「家族介護」から「地域介護」への転換がはかられつつある。そのために必要なのが地域援助である。
その活動内容としては、
①地域の民生委員、住民、保健スタッフなどがネットワークを作り、地域で孤立しやすい独居老人の生活を支援する。
②虚弱高齢者の仲間づくりや予防活動を目的に、地域の中に気軽に集まれる「ふれあいサロン」をつくる
③高齢者の最大組織である老人クラブやシルバー人材センターを活用して、社会参加の機会を確保し、生きがいづくりをする
⑤介護保険実施前と実施後の高齢者福祉の制度的変化を説明せよ。H22-7月午後
⑥介護保険制度の仕組み(制度概要)を説明せよ。
高齢化や核家族化...