【課題】「ペスタロッチの『隠者の夕暮』を読んで、ペスタロッチの人間観、教育観について述べよ」。一発合格ですが、主観的な内容です。
参考文献)『隠者の夕暮・シュタンツだより』、ペスタロッチー著、長田新訳、岩波文庫、1993年12月16日
『隠者の夕暮』(以下『夕暮』と記す)は、教育家ペスタロッチが34歳の1780年に著した本格的な処女作である。この書は、その内容、使われている言葉、文体などを見る限り教育書というよりは、ある種の宗教書としての趣が強い著作といえる。実際、ペスタロッチの人間観、教育観の基底にはキリスト教的博愛主義の思想があるのは明らかである。
『夕暮』の大きな特徴は、まずその文体になる。一貫した叙述の形式ではなく、ペスタロッチの思想を極めて断片的、抽象的に伝えている一種の箴言のようなスタイルをとっている。この思想の断片は十分に体系的なものとは言えないが、一文一文が彼の思想を凝縮しており、これ以降の彼の多くの著作や本格的な教育活動を説明する出発点、あるいはその源泉がここに見出せるのである。以下、『夕暮』を通して見たペスタロッチの人間観、教育観について述べてみたい。
ペスタロッチの人間観の典型は『夕暮』の冒頭に見られる。「1 玉座の上にあっても木の葉の屋根の蔭に住まっても同じ人間、その本質からみた人間、一体彼は何であるか」、あるいは「119 どんなに低い地位にあっても、婢僕はその主人と本質において同じで...