『資本論』第2部第15章、回転期間が資本前貸の大きさに及ぼす影響の学習会のレジュメ
第2部 第15章 回転期間が資本前貸の大きさに及ぼす影響 2011.11.01 WY
(1)15章と16章では回転期間が資本の価値増殖に及ぼす影響を取り扱う。
(2)例えば、1労働期間が9週間である労働生産物=商品資本を取り上げる。
固定資本の平均消耗によって生産物に付け加えられる価値部分も生産過程で生産物に付け加えられる剰余価値も無視することにすれば、この生産物の価値は、その生産の為に前貸しされた流動資本の価値に等しい。
すなわち労賃の価値と、この生産物の生産に消費された原料および補助材料の価値に等しい。この価値は900psであり、毎週の投下は100psとする。周期的生産期間は労働期間と一致していて9週間である。
・その場合、この労働期間は一つの連続的生産物のための1労働期間だと仮定するか、それとも分離性の生産物のための一つの連続的労働期間だと仮定するかは、この分離性の生産物の一度に市場に供給される量が9週間の労働を必要とするものでありさえすれば、どちらでもかまわない。
・流通期間は3週間としよう。そうすれば、全回転期間は12週間になる。9週間たてば、前貸しされた生産資本は商品資本に転化しているが、しかしそれはこれから3週間は流通期間のなかにいる。
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・従って、新たな生産期間は第13週のはじめにやっと再開できるのであって、生産は3週間すなわち全回転期間の1/4の間休止することになるであろう。商品が売れるまでに平均して3週間かかると前提するか、それとも、市場への距離によってかまたは売れた商品の支払い期限によってこれだけの時間が必要になると前提するかは、どちらでもかまわない。
*回転期間:12週間、全前貸=900ps
・生産は、3か月に3週間ずつ、従って1年では4×3=12週間=3か月=年回転期間の1/4だけ休止していることになる。それゆえ、生産が連続的で毎週同じ規模で営まれるべきだとすれば、それが可能なのは次の2つの場合だけである。
(3)一方の場合。生産の規模が縮小されて、第1の回転の労働期間中も流通期間中も作業を続けていくのに900psで足りるようにされなければならない。この場合には、第10週から、すなわち第1の回転期間が終わる前に、第2の労働期間が、従ってまた第2の回転期間が開始される。というのは、回転期間は12週間で労働期間は9週間だからである。
900psを12週間に割り当てれば、毎週75ポンドになる。まず第1に明らかな事は、このような事業規模の縮小は固定資本の大きさの変化を前提し、従って一般に事業設備の縮小を前提するということである。
*12週間を連続して生産した場合:全前貸=900ps
第1の回転期間(縮小)
第2の回転期間(縮小)
・第2に、およそこのような縮小が行われうるかどうかは疑わしい。というのは、いろいろな事業での生産の発展度に応じて資本投下の標準最小限というものがあって、それ以下では個々の事業は競争ができなくなるからである。この標準最小限そのものも生産の資本主義的発展につれて絶えず大きくなるのであり、従って決して固定したものではない。しかし、そのつど与えられている標準最小限と、絶えず拡大されていく標準最大限との間には、多数の中間段階――非常に様々な程度の資本投下を許す中間――が現れる。
・それゆえ、この中間段階の限界のなかでもまた縮小が起こりうるのであって、この縮小の限界がその都度の標準最小限そのものなのである。――生産の障害や市場の過充や原料の騰貴などが起きれば、労働時間の制限によって、例えば半日しか作業が行われないことによって、与えられた固定資本の基礎の上で流動資本の正常が投下の制限が行われる。
・同様に繁栄期には、あるいは労働時間の延長により、あるいは労働の強化によって、与えられた固定資本の基礎の上で流動資本の異常な拡大が行われる。このような変動をはじめから計算に入れている事業では、あるいは前述の手段により、あるいはより大きい労働者数の同時充用によって、切り抜けて行くのであるが、このあとのほうのことは予備固定資本、例えば鉄道ならば予備機関車などの充用と結びついている。しかし、このような異常な変動は、われわれが正常な諸関係を前提としているここでは考察の外にあるのである。
*「あるいは前述の手段により」とは「労働時間の延長により、あるいは労働の強化によって」のことか?
(4)こういうわけで、生産を連続的にするために、ここでは同じ流動資本の支出が最も長い期間に、すなわち9週間ではなく12週間に割り当てられている。だから、与えられた各期間には縮小された生産資本が機能するのである。生産資本の流動的部分は100から75に、すなわち1/4だけ縮小されている。9週間の労働期間中に機能する生産資本が縮小される総額は9×25=225ps、すなわち900ポンドの1/4である。しかし、回転期間に対する流通期間の割合もやはり3/12=1/4である。そこで次のようになる。商品資本に転化した生産資本の流通期間にも生産が中断されないで、むしろ同時に連続的に毎週続行されるべきだとすれば、そしてそのために特別な流動資本も与えられていないとすれば、このことはただ生産経営の縮小によってのみ、すなわち機能している生産資本の流動的成分の縮小によってのみ、達成することができる。
・こうして流通期間中の生産のために遊離させられる流動資本部分の前貸総流動資本に対する割合は、流通期間の回転期間に対する割合に等しい。このことがあてはまるのは、既に述べたように、ただ労働過程が毎週同じ規模で行われる生産部門だけである。
(5)しかし、これと反対に、生産規模の縮小、従ってまた毎週前貸しされるべき流動資本の縮小を事業の設備が許可されないような場合を仮定すれば、生産の連続は、ただ追加流動資本によってのみ、前述の場合では300psのそれによってのみ、達成できる。
*「前述の場合」?:流通期間3週間を中断しないで毎週100psの生産を行う。
・12週間の回転期間中に1200ポンドが次々に前貸しされて行くのであって、300ポンドがその1/4であるのは、3週間が12週間の1/4であるのと同じである。9週間の労働期間中のあとでは、900ポンドの資本価値が生産資本の形態から商品資本の形態に転化している。この資本の労働期間は終わっているが、しかし、それは同じ資本で更新されることはできない。この資本が流通部面で滞留していて商品資本として機能している3週間は、その資本は生産過程に関しては全然存在しないも同然の状態にある。
ここでは信用関係は全て無視する。従って、資本家はただ自己資本だけで経営するものと想定する。しかし、第1の労働期間の為に前貸しされた資本が生産過程ですんでから3週間流通過程に留まっているあいだは、追加的に投下された300ポンドの資本が機能しているので、生産の連続は中断されないのである。
(6)ところで、これについては次のことを注意しておかなければならない。
(7)第1に、最初に前貸しされた900ポンドの資本の労働期間は9週間後には済んでいる。
そして、この資本は、3週間たたなければ、つまり第13週のはじめにならなければ、還流しない。
しかし、新たな労働期間が300ポンドの追加資本で直ぐに再開される。まさにこれによって生産の連続が回復されているのである。
(8)第2に、900ポンドの原資本の機能と、9週間の第1の労働期間の終わりに新しく前貸しされて第1の労働期間の終了後に中断なく第2の労働期間を開始する300ポンドの資本の機能とは、第1の回転期間では明確に区分されているか、またはすくなくとも区分されることができるが、これに反して第2の回転期間の経過中にはこれらの機能は互いに入り混じっている。
(9)【以下第1例】事柄を分かりやすく表わしてみよう。
(10)12週間の第1の回転期間。9週間の第1の労働時間。この期間に前貸しされた資本の回転は、13週のはじめに完了する。最後の3週間には300ポンドの追加資本が機能して9週間の第2の労働期間を開始する。
(11)第2の回転期間。第13週のはじめ(図中のa)には900ポンドが還流して、新しい回転を始めることができる。ところが、第2の労働期間は追加された300ポンドによってすでに第10週に開始されている。第13週のはじめには、この追加資本によって既に労働期間の1/3が済んでおり、300ポンドは生産資本から生産物に転化している。
・第2の労働期間を終わるにはもはや6週間しか必要でないから、この労働期間の生産過程に入る事ができるのは、還流してきた900ポンドの資本の2/3、即ち600ポンドだけである。300ポンドは元の900ポンドから遊離していて、第1の労働期間に300ポンドの追加資本が演じたのと同じ役割を演ずることになる。
・第2の回転期間の第6週の終り(図中のb)には、第2の労働期間が済んでいる。この労働期間に投ぜられた900ポンドの資本は、3週間の後に、つまり第2の12週間の回転期間の第9週の終り(図中のc)に、還流してくる。その流通期間の第3週間の間は遊離した300ポンドの資本が入ってきている。こうして、900ポンドの資本の第3の労働期間は、第2の回転期間の第7週に、即ちその年の第19週に、始まるのである。
*図
第1の回転期間(12週間:1-12週)
前貸900ps a:第13週始め
追加投...