実践化学Ⅱ

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    実践化学レポート                       
    赤外分光法

     赤外分光法とは測定対象の物質に赤外光を照射し、吸収の度合いの違いにより、対象物を同定する方法のことである。比較的少量の試料で測定ができる。

    分子は常に振動しており、その振動数と同一の振動数をもつ赤外光を当てると、エネルギーを吸収し、高エネルギー状態になる。この赤外光の吸収のピークの違いによって測定対象の構造や状態を知ることができる。吸収される光の振動数は、分子間の結合が強いほど大きくなる。

     フーリエ変換型赤外分光法を用いると、タンパク質中の官能器や高極性結合を詳しく調べることができる。タンパク質中のある種の分子群は「指紋領域」と呼ばれる吸収スペクトルを示し、これは物質特有のものであるため物質の同定に利用できる。またアミドバンド(ペプチド結合に特徴的な赤外光吸収)やβ-strand構造に特有の赤外光吸収も得られ、これらはタンパク質の二次構造決定に有用である。なお、水の赤外光吸収を測定対象特有の吸収ピークと混同するのを避けるため、水溶液中での測定を行う場合は溶媒として重水を用いる。

    Raman分光法

     ラマンは物質に単色光を入射したとき、散乱された光の中に入射された光の波長と異なる波長の光(ラマン散乱光)も生じる現象を発見した。また、ラマン散乱光の振動数と入射光の振動数の差(ラマンシフト)は、入射する波長にかかわらず物質の構造に特有の値をとる。これらの現象を利用したラマン分光法を用いると、得られたスペクトルから分子の構造や状態を知ることができる。これは赤外光を用いてタンパク質の構造を調べるという点でIRと共通しているが、こちらは水溶性の試料や窒素などの双極子モーメントを生じない気体原子の研究にも適している。

    これを応用したものが共鳴ラマン分光法である。これは特に金属を中心にもつ酵素タンパク質の組織構造の研究に有用である。

    ESRとENDOR

    強磁場の条件下に置かれたタンパク質中の不対電子は、マイクロ波をあてるとそのエネルギーを吸収し高いエネルギー準位へと遷移する。ESR法は、この現象を利用することで不対電子の検出を行う分光法の一種である。酵素など、遷移金属を中心にもつタンパク質の研究に用いられる。ESRはFeを含むタンパク質の同定によく利用されるが、それ以外の遷移金属(Ni,Cu,Mo,Mnなど)をもつタンパク質の研究にも利用できる。

    ENDORは、ESRを改良することで開発されたものである。ESRでは、電子を励起させるのに連続波を用いるが、ENDORではパルス波を用いる。ESRを利用して、金属タンパク質の三次元構造やリガンドの情報を得ることができる。ENDORではさらにESRで知りえない電子と核の相互作用などの情報も得ることができる。このように高性能なENDORの設備は高価だが、タンパク質の構造決定にかかる時間の大幅短縮に貢献するなど他にも多くの利点がある。

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