抗生物質学レポート

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    化学療法の現在と将来についての考察
    水曜2限 抗生物質学 
     

    現在の日本の化学療法で用いられる薬剤の種類は非常に多岐に渡る.今日でも,なお多くの種類の新しい化学療法薬が開発されており,化学療法の選択肢はどんどん広がっている.

    細胞壁合成阻害薬や核酸合成阻害薬,タンパク合成阻害薬などの細菌に特徴的な生体分子に着目して開発された抗生物質は化学療法薬の代表例である.これらの多くの抗生物質は時代を下るにつれてそれぞれの抗菌スペクトルが拡大され,たった一種類の抗生物質でも,非常に多くの感染症を制御することが可能になった.また,原理的な選択毒性はないものの,ガンの化学療法に有効である白金製剤や微小管重合阻害薬が登場してきた.さらに最近では分子標的阻害薬の開発により,従来の化学療法薬を用いるより選択的にガンの増殖を抑制することが可能となった.

    しかしながら,新しい化学療法薬の開発により,臨床の現場で多くの新たな問題が生じているということを意識しなければならない.薬剤耐性菌の出現はその一例である.またニューキノロン薬による血糖値異常のように,開発段階では予測できないような重篤な副作用が現れる可能性もある.さらには,薬物相互作用を考える際に,薬物の種類が多ければ多いほど情報体系が複雑化し,医療過誤のリスクが増大する危険性があると推察する.

    現代の化学療法の発展が,熱心な研究によるさまざまな化学物質の開発の恩恵であることは紛れもない事実である.しかし私は,これからは新しい薬の開発のみならず,実際に薬物治療を行う上での戦略や考え方についての考察や議論を重点的に行っていくべきだと考える.というのも,授業の中で学んだPK/PD理論やエスカレーション療法/デエスカレーション療法に関する議論が非常に斬新で実践的であると感じたからである.また最近では,化学療法薬の中でも特に副作用の強い抗がん剤を用いた治療に関して,より効果的な治療指針が報告されている.大腸がんに対するFOLFOX療法(3剤併用療法)やB細胞性非ホジキンリンパ腫に対するR-CHOP療法がその一例である.またビタミン製剤と抗がん剤の併用により,神経障害の副作用を効果的に抑制できるという,化学療法を行う上で非常に有用な報告もある.

    上述のとおり,実際にどのように薬物を使うと効果的かというエビデンスの蓄積が今後の化学療法の発展にとって最重要であると考える.それによって,新薬が開発されずとも現存の化学療法薬のみでより効果的に疾患を治療することができるようになるからである.今後は,さらに多くの化学療法薬を対象に薬剤疫学的研究を推進し,臨床の現場での適切な使用法や他の化学療法薬との併用方法について考察していく必要がある.

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