基礎実習レポート環境系(衛生)

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    資料紹介

    資料の原本内容

    環境・分析系実習レポート
    Ⅱ-1 細胞実習の基礎
    実施日

    2010/10/8 ~ 2010/10/15
    提出日

    2010/10/28
    Ⅱ-1.1 無菌操作
    微生物学的環境調査

    目的
     安全性や正確さの観点から,微生物や培養細胞を扱う研究に不可欠である無菌操作の基本を習得する.身の回りに存在し我々の健康に深く関与する微生物を,寒天培地用いて培養し,環境中の微生物の存在と種類を確認するとともに,微生物の生理・生化学的性状反応を用いて同定を行う.

    結果
     標準寒天培地でⅠ)実験室の空気中に存在する微生物,およびⅡ)落ち葉に付着している微生物を37℃で一晩倒置培養し,生じたコロニーの計数と観察を行った.結果を【表1-1】にまとめた.
    【表1-1】標準寒天培地に形成されたコロニー数と観察結果

    シャーレ

    コロニー数(個)

    条件



    47

    空気中(実験室で30分間蓋を開けて放置した)



    44

    葉の表側:14

    葉の裏側:30

    落ち葉の表側および裏側を培地に押し付けた.
    Ⅰでは,黄色,白色,クリーム色のコロニーが多く,橙色,目玉焼きのような配色のコロニーも見られた.いずれも直径は5mm程度であった.コロニーの形態について,目玉焼き状のもの以外はすべて平らで円形であった.Ⅱでは,落ち葉を押し付けた部分全体に灰色のカビのようなものが生えていて,コロニーを計数できたのは培地全体の面積の1/5程度であった.橙色のコロニーと白色のコロニーが生じていた.いずれも直径は1mm程度と小さく,橙色のコロニーは葉の裏側,白色のコロニーは葉の表側を押し付けた部分に多かった.形態はいずれも平らで円形であった.
     APIテストにはシャーレⅠのクリーム色のコロニーを用いた.各項目の結果は別紙【図1-1】を次ページに添付した.また,これをAPIWEBソフトに入力して微生物の同定を行った結果を以下の【表1-2】に示した.
     
    【図1-1】APIテストの各項目の結果

    【表1-2】微生物の同定結果

    結果

    %ID

    T

    非典型反応

    Myroides spp/

    Chryseobacterium indologenes

    62.5

    0.72

    OX 99%

    Chryseobacterium indologenes

    34.5

    0.64

    IND 75%, OX 99%

    次候補
    Pasteurella pneumotropica/
    Mannheimia haemolytica

    1.4

    0.55

    URE 25%,

    OX 80%, GEL 3%

    追加試験

    ESC(HYD)

    GLUCOSE

    O/129R

    Chryseobacterium indologenes

    98%

    98%



    Myroides spp

    2%

    2%


    考察
     実験室の空気中の細菌を試料として用いたのは,空気中にどのような種類の細菌が存在するかを知り,食品の腐敗や易感染者への感染原因菌が実際に身の回りに存在するかどうかを確かめるためである.また,一般的に土壌中の微生物は分解者として落ち葉などの有機物を分解することが知られているので,空気中からの落下細菌の数に比べて落ち葉に付着している細菌数が多いかどうかを検討する目的で落ち葉を試料として用いた.生じたコロニー数や形態の観察については結果の項目でまとめた.
     今回同定された結果のMyroides spp/Chryseobacterium indologenesとはBacteriaドメイン,Bacteria界,Bacteroides門,Flavobacteria鋼,Flavobacteria目,Myroides科,Myroides属菌が複数種と,Bacteriaドメイン,Bacteria界,Bacteroides門,Flavobacteria鋼,Flavobacteria目,Flavobacteria科,Chryseobacterium属,Chryseobacterium indologenesがコロニーに含まれていたことを示す.
     フラボバクテリア属菌は非運動性の非発酵好気性グラム陰性桿菌である.淡水中や空気中に多く存在し,ヒトに病原性を示すもの,魚類に病気をおこすものも含まれる.また,食品工業の現場では腐敗菌として問題視されている.前述のように環境中に広く存在する細菌であり,健常者への感染症例はほとんど報告されてない.臨床では傷口への感染や易感染者への日和見感染が報告されている.
     次候補としてPasteurella pneumotropica/Mannheimia haemolyticaがあるが,いずれもBacteriaドメイン,Bacteria界,Proteobacteria門,Gammaproteobacteria鋼,Pasteurella目,Pasteurella科,Pasteurella属の種であり,非運動性発酵好気性グラム陰性桿菌である.パスツレラ属菌は日和見感染症を起こす可能性がある常在細菌で,犬や猫などの多くの哺乳動物の口腔内に多く存在する.ネコひっかき病の主症状である皮膚化膿症の他に,重篤な呼吸器症状を起こす例も報告されている.
     API判定のINDの項目が陰性と陽性との判断の境界ともとれるピンク色の呈色をしたこと,および陽性率表を考慮し,次候補の可能性を否定できると判断した.
     API判定の結果と細菌に関する情報から,実験室の空気中にはフラボバクテリア属菌が存在することが確認できた.食品等の有機物を放置するとフラボバクテリア属菌を含む空気中の細菌が付着し,腐敗の一因となると推定できる.また,空気中には数多くの細菌が存在することから,実験室は,実験用の細菌を扱う環境として適切ではないと言える.培養などの実験操作を正確に行うためにはクリーンベンチを利用するなど細心の注意を払う必要があると考える.また,易感染者に対して感染症の原因となることが示唆されている微生物が存在することから,実験室内は易感染者が生活するにあたって安全な環境であるとは言えない.
     空気中からの落下細菌の数に比べて落ち葉に付着している細菌数が多いかどうかを正確に判断することはできなかった.結果として得られたコロニー数のみを単純に比較すると,空気中の落下細菌よりも落ち葉に付着していた細菌が少なかったことになるが,数の差が明確ではなかったため,さらに試行回数を増やして判断する必要があると考えた.また正確に判断できなかった他の原因として,落ち葉に付着していたカビが多くシャーレをほぼ全体的に覆っていたため計数できなかったこと,カビによって細菌の育成が抑制されたこと,落ち葉に付着していた多くの細菌が今回の培養条件では増殖しなかったことなどが考察される.このことから,正確な細菌数の判断の際には,様々な培養方法や,特定の細菌を選択的に培養する方法で計数する必要があると考えた.
    Ⅱ-1.2 顕微鏡操作
    グラム染色

    目的
     グラム染色は,細菌を細胞壁の成分の違いから染め分ける細菌染色法である.顕微鏡で細菌を観察す際に現在でも微生物学分野で用いられているHuckerの変法によるグラム染色法を習得する.
    結果
    Escherichia.coli
     顕微鏡全体に桃色の菌が集合していた.染色が非常に薄く観察しにくかったが,菌の一つ一つの構造は楕円形から桿形であった.
    Staphylococcus epidermidis
     顕微鏡全体に紫色の菌の集合が見られた.菌の数が非常に多く,菌の細胞一つ一つの形態を詳細に観察するのは難しかったが,およそ球形に近い形をしていた.
    考察
     グラム染色の原理は以下のとおりである.まずスライドガラスに固定したすべての細菌にルゴール液を加えると,Huckerのグラム染色液中のクリスタルバイオレットが細胞壁や細胞内のタンパク質と相互作用により定着する.これにルゴール液を加えると,ヨウ素イオンとクリスタルバイオレットが細胞内および細胞表面に複合体を形成する.次にアルコールによる脱色反応を行うが,この段階でグラム陰性菌とグラム陽性菌の脱色に違いが生じる.グラム陰性菌の場合には細胞内外の複合体が除かれるのに対して,グラム陽性菌においては,細胞内の複合体は除かれず細胞表面の複合体のみが除かれる.これはグラム陽性菌とグラム陰性菌の細胞壁の構造の違いに起因する.グラム陽性菌の細胞壁はペプチドクリカンやタイコ酸,タンパク質,多糖からなる厚い構造をとっており,アルコールによる細胞壁の損傷が少ない.一方グラム陽性菌の細胞壁は,リポ多糖やリポタンパク質などからなる外膜と,薄いペプチドグリカン層からなり,アルコールによって膜が損傷される.クリスタルバイオレットとヨウ素イオンとの複合体は分子量が大きく細胞の膜構造を透過しないが,グラム陰性菌では,膜の損傷された部分から複合体が漏れ出し,脱色されると考えられる.このままではグラム陰性菌は脱色されたままで観察できないので,サフラニンを用いて赤色に染色する.
     グラム染色の結果は結果に示した通りである.グラム陰性菌であるEscherichia.coliは桃色に,グラム陽性菌であるStaphylococcus epidermidisは紫色に染色されていた.なお,今回観察に用いた光学顕微鏡の倍率は400倍であったが,形態の観察には通常対物油浸レンズを用いて1000倍で観察するのが一般的である.形態がうまく観察できなかったのは,サフラニンによる染色が不十分であったこと以外に,観察に用いた顕微鏡の倍率が不適切であったこ...

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