基礎実習レポート 1-9 凝固点降下による分子会合の決定
実験実施 2010/05/20
提出 2010/05/26
Ⅰ.目的と概要
分子量決定法の1つである凝固点降下の実験を行い、分子の会合様式の検討を行う。蒸発、汚染などによる実験誤差を如何に除くかなど、緻密な実験の遂行技法を会得する。
Ⅱ.原理
結果の項目で一括して触れることにする。
Ⅲ.実験手順と結果
テキストに準ずる。ただし、一回目はナフタレンを加えずに測定を行い、ナフタレンを0.4002g、0.4000g、0.1998g加えた場合についてそれぞれ一回ずつ測定を行った。順に一回目、二回目、三回目、四回目として結果を【表1】に示す。
またこの表1の結果をプロットしたものを【グラフ1】として以下に示す。
【表1】ジオキサンの温度変化
【表1】ジオキサンの冷却曲線
このグラフからそれぞれの凝固点は以下のように読み取れる。ただし、二回目、三回目、および四回目の凝固点はテキストにあるように、過冷却終了後のプロットから求めた直線の過冷却前の曲線への補外により求めた。(回数、凝固点のベックマン温度計の読み)=(一回目、2.69)(二回目、3.23)(三回目、3.68)(四回目、4.11)
すなわち、ナフタレンを総量で0.4002g、0.8002g、1.0000g加えたときの凝固点降下出ΔTはそれぞれΔT1=0.00、ΔT2=0.54、ΔT3=0.99、ΔT4=1.42であった。ジオキサン1000gあたりのナフタレンの重量を以下の式により求めたところ、m1=0.00、m2=12.91、m3=25.82、m4=32.27であった。
求めたΔTとmの関係を【グラフ2】に示した。ただし曲線の近似には最小二乗法を用いた。
【グラフ2】ΔTとmの関係
ジオキサンの液相から個相への相転移を考える。
ジオキサンの標準融解ギブスエネルギーΔG°は以下の式で定義される。
純粋なジオキサンにナフタレンを溶かした時のそれぞれのモル分率を A、 Bとおくと、
ただしxA<1であるから溶媒ジオキサンの化学ポテンシャルは純粋なジオキサンの化学ポテンシャルよりも小さくなる。また凝固点Tにおいては固液平衡が成り立つから、
温度Tの微小変化によるの変化を考えると①より、
Tの微小変化について考えると、
これをで積分すると、
希薄溶液中では、
重量モル濃度で換算すると、
②、③より、
グラフから、傾きはa=0.04231であり、④式より、
Ⅳ. 考察
ナフタレンの分子量は130.18であるが、実験で求めたモル質量値と一致しない。原因として、測定中かき混ぜ棒で撹拌することで銅のメッキがはがれ、ジオキサン中のイオン濃度が高くなってしまったことが第一に考えられる。イオン濃度が上がるとΔTが上がり、結果として直線の傾きは理論値より大きくなってしまう。その他に、ナフタレンを追加する際に揮発性をもつジオキサンが揮発してしまったこと、わずかではあるがこぼしてしまったことが誤差の原因だと考えられる。
凝固点を求める際に、過冷却終了後のプロットから求めた直線の過冷却前の曲線への補外を行ったのは、より正確な値を求めるためである。今回の実験で見られたように、ジオキサンの冷却曲線は凝固開始から凝固が進むにつれて液温が徐々に下がっていく。ジオキサンのみが凝固するため、残ったジオキサン溶液中のナフタレン濃度が次第に大きくなるからである。このため過冷却がなく理想的に凝固が始まったとみなせる温度(真の凝固点)を求めるには、凝固開始後の冷却曲線を逆方向に延長して、凝固前の冷却曲線との交点を求める必要がある。
Ⅴ. 参考
桐野豊編、物理化学(上)、共立出版、1999、217p
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