V(被害者)が行方不明になったと家族から捜索願が出されていたところ、X(被告人)がVのキャッシュカードを用いて自動預払機から現金を引き出していたこと、Vの自動車が山中に放置されていたこと、Vの自動車やV宅から血痕が見つかったことなどから、強盗殺人事件との疑いが生じ、捜査が進められる中でXが容疑者として浮かんできた。警察官は、数ヶ月にわたりXの動静観察を続けていたが、Xが公道上のゴミ集積所に排出したゴミ袋に何か本件の証拠となるものがないかを探し、現金自動預払機の防犯カメラに写っていた人物が着用していたダウンベスト及びその人物がはめていた時計と似たダウンベスト及び時計を領置した。この捜査方法の適否を論じなさい。
0.本事例について
V(被害者)が行方不明になったと家族から捜索願が出されていたところ、X(被告人)がVのキャッシュカードを用いて自動預払機から現金を引き出していたこと、Vの自動車が山中に放置されていたこと、Vの自動車やV宅から血痕が見つかったことなどから、強盗殺人事件との疑いが生じ、捜査が進められる中でXが容疑者として浮かんできた。警察官は、数ヶ月にわたりXの動静観察を続けていたが、Xが公道上のゴミ集積所に排出したゴミ袋に何か本件の証拠となるものがないかを探し、現金自動預払機の防犯カメラに写っていた人物が着用していたダウンベスト及びその人物がはめていた時計と似たダウンベスト及び時計を領置した。この捜査方法の適否を論じなさい。
1.ゴミ袋からの領置行為について
本事例では、警察官がXが公道上のゴミ集積所に排出したゴム袋からダウンベスト及び時計を領置した。本事例では、令状による領置という事情がないため、刑事訴訟法221条の関係から、当該警察官の留置は適法な行為か問題となる。
刑訴法221条は、捜査機関が被疑者その他の者が遺留した物を令状なく領置することを認めている。そのため、本事例...
1.ゴミ袋からの領置行為について
本事例では、� ��察官がXが公道上のゴミ集積所に排出したゴム袋からダウンベスト及び時計を領置した。本事例では、令状による領置という事情がないため、刑事訴訟法221条の関係から、当該警察官の留置は適法な行為か問題となる。
刑訴法221条は、捜査機関が被疑者その他の者が遺留した物を令状なく領置することを認めている。そのため、本事例のゴミ袋が遺留物といえるか、いえるとして捜査機関たる警察官は何らの制限なくゴミ袋を領置できるかが問題となる。
刑訴法221条において、遺留物が令状なくして取得可能としているのは、遺留物の占有取得の過程に占有の強制排除の要素を伴わないからである。この刑訴法221条の趣旨からすると、領置可能な遺留物とは、遺失物よりも広い概念であり、自己の意思によらず占有を喪失した場合に限 られず、自己の意思によって占有を放棄し、離脱させた物を言うと解される。