論理回路
1、実験概要
デジタル回路の基礎である論理回路について、その構成と基本動作を理解する。また、実験についてレポートをまとめ、技術的な文書の適切な書き方を習得する。論理回路実習装置を用いて、基本論理回路の入出力関係を調べる。また、真理値表の形で与えられた入出力関係を持つ論理回路を、基本論理回路を接続することにより実現する。実験は3つ行う。基本論理回路を組み立て、測定結果と真理値表を確認し一致すること。基本的な論理回路について、実際の論理素子を用いて回路を組み上げ、動作を確認することで論理回路に対する理解を深める。
2、原理
2-1.基本論理回路
論理回路とは、コンピュータなどのデジタル信号を扱う機器において論理演算を行う電子回路である。
基本的なものにはAND回路 (論理積回路)、 OR 回路 (論理和回路)、 NOT 回路 (否定回路) などがある。 これらは基本論理回路と呼ばれる。AND 回路や OR 回路には複数の入力があり、 AND 回路はそれらがすべて1のときだけ、 OR 回路は少なくとも一つが1になれば出力が1になる。NOT 回路の入力はひとつで、 常に入力信号が 1 のときは 0 を、 0 のときは 1 を出力する。
入力をA,B、出力をYとするなら
論理積は
Y=A・B
論理和は
Y=A+B
論理否定は
Y=
と表現される。
MIL規格による図記号を図1に、真理値表を表1に示す。
AND回路 OR回路 NOT回路
図1:基本論理回路
表1:基本論理回路の真理値表
AND回路 OR回路 NOT回路
AND 回路、OR 回路、NOT 回路はいずれも、これを組み合わせることによってさまざまの働きをさせることができる。NAND回路(否定論理積回路)、NOR回路(否定論理和回路)、Exclusive OR回路(排他的論理和回路)がある。NAND 回路はそれらがすべて1のときだけ、 NOR 回路は少なくとも一つが1になれば出力が0になる。Exclusive OR回路は2つの入力が異なれば出力は1、入力が同じならば出力は0になる。NAND回路とNOR回路はそれぞれ1種類だけで任意の組合せ回路を合成することができる。
入力をA,B、出力をYとするなら
否定論理積は
Y=
否定論理和は
Y=
排他的論理和は
Y==
と表現される。
MIL規格による図記号を図2に、真理値表を表2に示す。
NAND回路 NOR回路 Exclusive OR回路
Exclusive OR回路
図2:論理回路
表2:論理回路の真理値表
NAND回路 NOR回路 Exclusive OR回路
2-2.基本論理回路による論理回路の合成
回路は、それぞれ真理値表に基づいて任意の組合せ回路を合成することができる。
目的とする組合せ回路んお入出力関係を真理値表で表す。
真理値表の出力が1である各段について、値が1である入力はそのまま、値が0である入力には否定回路を接続してから、必要な個数だけ入力のある論理積回路に入力する。
上記の論理積回路すべての出力を、必要な個数だけ入力のある論理和回路に入力すると、その出力が求める組合せ回路の出力になる。
ただしこの方法は最小の基本論理回路の個数と等しくなるわけではない。
3、実験
3-1.使用器具
・論理回路実習装置ITF-02
・ケーブルセット
3-2.実験(1)
AND回路、OR回路、NOT回路、NAND回路、NOR回路について、その入出力関係を調べる。結果は真理値表の形に整理する。MIL規格による図記号を図3に、真理値表を表3に示す。AND回路、OR回路、NOT回路は、すでに論理回路実習装置に組み込まれているので入力と出力を接続するだけでよい。入力は1か0で行う。出力は右上の電子版に表示される。NAND回路は、AND回路と出力先とNOT回路の入力先を接続する。NOR回路は、OR回路の出力先とNOT回路の入力先を接続することで合成できる。配線は図4、5のようにする。尚、図5のNOT回路は接触が悪く18のNOT回路に変更する。
AND回路 OR回路 NOT回路
NAND回路 NOR回路
図3:実験(1)
表3:実験(1)の真理値表
AND回路
OR回路
NOT回路
NAND回路
NOR回路
入力
出力
入力
出力
入力
出力
入力
出力
入力
出力
1
2
1
4
5
2
10
3
1
2
1
4
5
2
0
0
0
0
0
0
0
1
0
0
1
0
0
1
0
1
0
0
1
1
1
0
0
1
1
0
1
0
1
0
0
1
0
1
1
0
1
1
0
0
1
1
1
1
1
1
1
1
0
1
1
0
図4:AND回路とOR回路
図5:NOT回路
3-2.実験(2)
AND回路、OR回路、NOT回路を接続することにより、Exclusive OR回路を合成する。合成された回路の入出力関係を調べて、真理値表に整理し、正しくExclusive OR回路が合成されていることを確認する。MIL規格による図記号を図6に、真理値表を表4に示す。
今回は、入力を1,2番から、出力を1番から行う。まずAND回路が2つあるので左端の接続端子1番と2番にそれぞれ入力を接続する。そこから18番、19番のNOT回路に入力してからAND回路に出力する方と、そのままAND回路に出力する方を接続する。AND回路の1番2番2つの出力をOR回路に入力する。最後に1番に出力して完成。
図6:Exclusive OR回路
表4:Exclusive OR回路の真理値表
入力
出力
1
2
1
0
0
0
0
1
1
1
0
1
1
1
0
3-3.実験(3)
AND回路、OR回路、NOT回路を接続することにより、次の論理回路を合成する。
・入力0の数が多ければ出力は0
・入力1の数が多ければ出力は1
となる3入力1出力の論理回路。
合成された回路の入出力関係を調べて、真理値表に整理し、正しく回路が合成されていることを確認する。MIL規格による図記号を図7に、真理値表を表5に示す。配線は図8のようになる。尚、AND回路は4入力1出力なので余った1つは必ず入力を1にする。
手順①真理値表を作成する。
手順②真理値表の出力が1である各段について、値が1である入力はそのまま、値が0である入力には否定回路を接続してから、必要な個数だけ入力のある論理積回路に入力する。
手順③最後に論理積回路の出力を論理和回路に入力すると、その出力が求める組み合わせ回路の出力になる。この手法を主加法標準形と言う。
今回は、入力を1,3、5番から、出力を1番から行う。まずAND回路が4つあるので接続端子の各番にそれぞれ入力を接続する。そこから20~22番のNOT回路に入力してからAND回路に出力する方と、そのままAND回路に出力する方を接続する。AND回路の34~37番4つの出力をOR回路に入力する。最後に1番に出力して完成。
表5:実験(3)の真理値表
A(1)
B(3)
C(5)
Y(1)
0
0
0
0
0
0
1
0
0
1
0
0
0
1
1
1
1
0
0
0
1
0
1
1
1
1
0
1
1
1
1
1
←34
←35
←36
←37
図7:実験(3)
図8:実験(3)の配線図
4.考察
実験(1)~(3)ともに測定結果と真理値表は一致した。基本論理回路とその合成方法を学んだ。
5.まとめ
本実験では、論理回路の仕組みを学び、実際に論理回路実習装置を使い基本論理回路を組み立てた。実験結果より測定値と真理値表が一致することを確認した。
【参考文献】
平成23年度情報基礎実験 近畿大学生物理工学部 システム生命科学科編
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