「法と道徳は峻別されなければならない」とする考えの是非について論じなさい。(2011年度第2課題、評価C)
1、法も道徳も社会生活を規律する客観的な社会規範である。近代西欧国家以前において、ローマ法以外の法体系は、法と道徳との区別がされていなかった。
しかし、近代市民法のように「人の支配」から「法の支配」の確立と身分的・非法律的な拘束から脱するため、法実証主義を中心に近代の合理主義的論理と無矛盾性の原理に基づいて、法と道徳は峻別されていった。
ところが、資本主義経済の高度な発展は、形式論理的に法を適用するだけでは処理しきれない社会問題が累積し、資本主義のエゴイズムに奉仕する近代法に歯止めをかけるためにも、解決手段として、法と道徳との積極的結合、法の倫理化・社会化が要請され、あらためて「法とは何か」、「法を法たらしめているものは何か」という、法の本質に関する議論がされるようになった。
2、法も道徳もともに社会に存在する客観的な規範であり、経験的・相対的な社会規範である。以下、これらの認識の上で比較検討していく。
(1)法の外面性と内面性
法は、外面的行為に対する規範であり、反対に道徳は、人間の内心意思に対する規範であるというものである。しかし、刑法第38条のように、法も内心意...