解析学のレポートです.
縮小写像の不動点定理の変形.
1
X を完備距離空間, T を X 上の写像で, ある n ∈ N に対して T n が縮小写像になっている
とする. すなわち, 任意の x, y ∈ X に対して, r ∈ [0, 1) が存在して,
d(T n x, T n y) ≤ rd(x, y)
が成り立つとする. このとき T は X に唯一の不動点を持つ. これを示せ.
証明
xi0 ∈ X, i = 1, 2, に対して xj = T jn xi0 で与えられる X の点列 {xij }j∈N をとる.
以下,区別の必要がなければ xij を単に xj と書くことにする.
d(xj+1 , xj ) = d((T n )j x1 , (T n )j x0 )
≤ rj d(x1 , x0 )
j < k に対して
d(xk , xj ) ≤ d(xj+1 , xj ) + . . . + d(xk , xk−1 )
≤ rj (1 + r + . . . + rk−j−1 )d(x1 , x0 )
≤
rj
d(x1 , x0 ) → 0
1−r
(j → ∞)
すなわち, {xij } は完備距離空間 X の Cauchy 列であり,ある点 xi ∈ X に収束する.
このとき
d(x1 , x2 ) ≤ d(x1 , x1j ) + d(x1j , x2j ) + d(x2j , x2 )
= d(x1 , x1j ) + d(T jn x10 , T jn x20 ) + d(x2j , x2 )
≤ d(x1 , x1j ) + rj d(x10 , x20 ) + d(x2j , x2 ) → 0
(i → ∞)
⇔ d(x1 , x2 ) = 0 ⇔ x1 = x2
より点列 {xij } は同じ点に収束するから x = lim xj とおける.
j→∞
T n は連続 (∀ϵ > 0, x, x′ ∈ X, d(x, x′ ) ≤ rϵ ⇒ d(T n x, T n x′ ) ≤ ϵ) だから
T n x = T n ( lim xj ) = lim T n xj
j→∞
j→∞
= lim xj+1 = x
j→∞
が成り立つ.
また,r ∈ [0, 1), d(T x, x) ≥ 0 だから
d(T x, x) = d(T n+1 x, T n x) ≤ rd(T x, x)
⇔ d(T x, x) = 0 ⇔ T x = x
したがって, x は T の不動点である. いま,x′ を T の任意の不動点とすると
d(x, x′ ) = d(T n x, T n x′ ) ≤ rd(x, x′ ) ⇔ x = x′
以上より T は X に唯一の不動点をもつ.
2
X を距離空間とする. K を X のコンパクト集合として, T を X から K への連続写像とす
る. このとき, 任意の n ∈ N に対して
d(T xn , xn ) <
1
n
となる xn ∈ X がつねに存在するならば, T は X に不動点を持つ. これを示せ.
証明
d(T xn , xn ) < n1 をみたすように X の点列 {xn } をとる.{T xn } はコンパクト集合 K の点列
だから, K の点 x に収束する部分列 {T xnk }k∈N をもつ. このとき
d(x, xnk ) ≤ d(x, T xnk ) + d(T xnk , xnk )
1
≤ d(x, T xnk ) + → 0 (k → ∞)
k
⇔ lim xnk = x
k→∞
また,T の連続性より
T x = T ( lim xnk )
k→∞
= lim T xnk = x
k→∞
したがって T は X に不動点 x を持つ.