民事訴訟法論文答案練習
~訴え提起の効果~
【問題】
訴え提起の効果として何があるか。
【考え方】
訴え提起
意義:訴えとは、原告が裁判所に対して裁判を求める申立てをいう(133条)。
効果:特定の事件が特定の裁判所で審判される状態(訴訟係属)が生じる。
・訴訟係属の発生時期
1)訴訟提起時説:現行法は訴え提起と訴訟継続を区別しない
民事訴訟法147条
2)訴訟送達時説:被告に訴状が到達して初めて二当事者対立構造が生じる
訴状に不備があれば裁判長の命令で訴状を却下される
・訴訟法上の効果
(1)二重起訴の禁止(142条)
(2)訴訟参加(42条、47条、52条等)、訴訟告知(53条)が可能となる。
(3)訴えの変更(143条)、反訴(146条1項)、中間確認の訴え(145条)などの関連した請求の裁判籍が発生する。
・実体法上の効果
・・・起訴のときに、起訴に基づく事項中断または法律上の期間遵守の効果が発生。
→ 時効中断の効果の根拠(147条の趣旨)から、どのように説明するか。
1)権利行使説:訴状の提出は、権利者が権利の上に眠るべきものではないことを示す権利者の権利主張の態度だから。
2)権利確定説:権利関係が判決の既判力によって確定されるから時効中断する。しかし、手続の遅延により時効消滅の危険が生じるので、訴状の提出時に中断する。
…善意の占有者が本訴の訴えにおいて敗訴したときは、起訴時から悪意の占有者とみなされる(民法189条2項)。
【答案例】
1 訴えとは、原告が裁判所に対して裁判を求める申立てをいう(133条)。訴えの提訴によって、特定の事件が特定の裁判所で審判される状態が生じる。この状態を訴訟係属という。訴訟係属は、被告への訴訟送達時に発生すると解する。なぜなら、被告に訴状が送達されて初めて二当事者対立構造が生じるからである。
2 訴訟法上の効果
(1) 当事者は、裁判所に係属する事件につき、さらに訴えを提起することができない(民訴142条)。これは二重起訴の禁止を定めたもので、①裁判の矛盾防止、②被告の二重応訴の防止、③訴訟経済の無駄の防止を立法趣旨とする。
いかなる場合が、二重起訴にあたるかについては、二重起訴が禁止される趣旨を考慮しながら、①当事者が同一であるか、②訴訟物が同一であるかを個々の具体的問題に即して検討しなければならない。
この点、2つの事件の主要な争点を共通にする場合も別訴が禁じられるかが問題となっているが、判決効として判決の主文のみならず判決理由中のレベルでも考えること(争点効)が妥当であるから、主要な争点を共通にする場合も禁じられると解するべきである。
二重起訴にあたれば、訴えは却下されるが、すべて却下されるのではなく、別訴を前訴と併合する余地があるのであれば併合を認めてよいと解するべきである。訴訟利用者の利益を重視するからである。
(2) 訴訟参加(民訴42条、47条、52条等)、訴訟告知(民訴53条)が可能となる。
(3) 訴えの変更(民訴143条)、反訴(民訴146条1項)、中間確認の訴え(民訴145条)などの関連した請求の裁判籍が生じる。
3 実体法上の効果
(1) 起訴に基づく時効中断および期間遵守の発生時期は、訴えの提起時である(147条)。
時効中断の根拠につき、権利関係の存否が判決によって確定され、継続した事実状態が法的に否定される点にある。そうだとすると、時効中断の時期は判決確定時になるのが筋である。それにも関わらず、147条が時効中断の時期を基礎の時としているのは、訴訟の遅延により、時効消滅の危険が生じるのでそのような影響を防止することにある。
時効中断の根拠を判決による権利の確定であるとすると、時効中断の範囲は判決効の範囲をどのように考えるかで決まる。
思うに、紛争の一回的解決のために、判決効としては既判力のみならず争点効も考えるべきであり、主要な争点たる権利関係まで中断効が及ぶと解する。
(2) 善意の占有者が本訴の訴えにおいて敗訴したときは、起訴時から悪意の占有者とみなされる(民法189条2項)。