表現行為によるプライバシー侵害の問題についての判例の立場を紹介し、これを論評せよ。
表現行為によるプライバシー侵害の問題についての判例の立場を紹介し、論評せよ。 プライバシーの権利とは、19世紀アメリカにおいて生成された概念であり、ウォーレンとブランダイズの論文「The Right to Privacy」により、初めて登場したとされる。彼らは、プライバシーの権利を「一人でほっておいてもらう権利」と主張し提唱した。現在では、私生活や個人の秘密を他人から干渉・侵害されない権利と理解される。
わが国で初めてプライバシーの権利性を認めたのが、「宴のあと」事件判決である。この判決において、プライバシーの権利を、私生活をみだりに公開されない利益ないし権利と定義し、公益の秩序、利害に直接関係のある事柄や、社会的に著名な存在である場合には、事柄の公的性格から一定の合理的な限界内で私生活の側面でも報道、論評等が許されるにとどまり、たとえ報道の対象が公人、公職の候補者であっても、無差別、無制限に私生活を公開することが許されるわけではないとしてプライバシー権侵害への法的救済を認めた。その要件とは、公開された内容が、私生活上の事実または事実らしく受け止められるおそれのある事柄であること、一...