19世紀における企業体は小規模で自己資金によるものが主であったが、製造工程の機械化に伴い多額の資金を有価証券(株式)の発行により調達する…
エージェンシー問題、不完備契約、企業コントロール、コーポレート・ガバナンス
コーポレート・ガバナンス論の系譜
1. 近代企業における所有と経営の分離
19世紀における企業体は小規模で自己資金によるものが主であったが、製造工程の機械化に伴い多額の資金を有価証券(株式)の発行により調達する「株式会社(joint-stock company)」へ発展した。バーリー(Adolf A. Berle)とミーンズ(Gardiner C. Means)はその著書「The Modern Corporation & Private Property」で1930年時点のアメリカにおいて企業組織が近代化・大規模化するに伴い、株主数の顕著な増加や企業支配形態の変化がみられることを指摘した。特に支配形態の変化に関しては、所有(ownership)と支配(control)の分離が近代的な大企業を中心に進み、彼らはそれを準公共企業(quasi-public cooperation)と呼んだ。このような企業では経営者が自らの利益を追求するあまり株主のチェック・アンド・バランスのメカニズムが有効に機能しないと指摘した。彼らの主張に対しては問題が指摘される(例えば、近代資本市場において高い情報力...