1章 はじめに
今日、ありとあらゆる人・もの・サービスが国境を越えて移動し、人々の生活も国境を越えて営まれている。我々が日常で触れるものの中には一部または全部を海外で生産されたものが溢れ、またOEM供給・PB商品などにより、消費者と製造者の距離はますます遠くなっている。一方でサリドマイドの悲劇や国際的な航空事故のように、ひとつの製品が多数の国で被害を出す可能性も高まっている。
このような状況の下、国際的な取引を頻繁に行う企業が遭遇しうる渉外的なトラブルは多様化している。私は企業の法務部でのインターンシップを通じて、想定されうる様々なトラブルへの予防法務の重要さを実感すると共に、被害にあった消費者は顔の見えない製造者に対しどのように責任追及していけるのか、また製造物責任の法制度はどうあるべきなのか、関心を抱いた。製造物責任の法理が早くから発達していたアメリカと我が国の現状を比較した上、製造物責任の準拠法制定の在り方について検討し、またこの現状を踏まえて企業はどのような努力をしていく必要があるのか考えていきたい。
2章 製造物責任 日米の現状
1 米国
歴史
19世紀の半ば頃は消費者が損害賠償請求を行う場合、当事者間に契約関係が必要とされていた。しかし1916年に契約関係の有無に関わらず、危険な商品を提供した製造者は発生した損害について責任を負うと判事され、1963年には厳格責任主義が採用されることになった。
このように世界に先駆けて無過失製造物責任制度を発展させたアメリカでは、1965年に製造物責任について不法行為上の無過失責任の法理を条文の形に再構成した「第二次不法行為法リステイトメント」がほとんどの州で採用された。
ー準拠法及び企業活動における
製造物責任対策を中心にー
目次
はじめに
製造物責任 日米の現状
1米国
歴史
特徴
(ⅰ)法的根拠(ⅱ)欠陥の判断基準(ⅲ)責任主体(ⅳ)法廷責任期間(ⅴ)懲罰的損害賠償
民事訴訟における特徴
(ⅰ)陪審制(ⅱ)ディスカバリー(ⅲ)弁護士の成功報酬制度(ⅳ)訴訟社会
2日本
(1)歴史
(2)特徴
(3)民事訴訟における特徴
製造物責任の準拠法
1 米国
(1)不法行為地法主義
(2)利益分析論
(3)最も重要な関係
2 日本
(1)契約責任として法例7条に従う
(2)不法行為責任として法例11条により、不法行為地法を原則的に準拠法とする説
(ⅰ)結果発生地説(ⅱ)類型説(ⅱ)行動地法説
(3)条理
(ⅰ)被害者の常居所地法説、(ⅱ)市場地法説、(ⅲ)ハーグ条約の立場を取り入れる説、(ⅳ)ハーグ条約よりいっそう原告による選択の範囲を広げるべきとする選択的適用主義説
準拠法の適用
(ⅰ) 適用排除外 (ⅱ) 懲罰的損害賠償
考察
1 準拠法の制定方法
2 企業における製造物責任対策
終わりに
1章 はじめに
今日、ありとあらゆる人...