弁護士が負う社会的義務・使命の考察
■はじめに
民法や刑事訴訟法など、いわゆる実体法の勉強において、実際に裁判所がいかなる事実認定をしたのか、いかなる法解釈をしたのか、という結論を先取りする形になってしまい、当事者がいかなる思いで訴訟を提起するに至ったのか、等と言った部分に余り思いを馳せることはない。例えば関係者の嘆願書などであれば、これは法解釈と何の関係のない書類である、と頭から切り捨ててしまいそうな部分である。しかしこうした法解釈・適用の不当さを訴える声が、杓子定規に法を適用するのでは足りない根拠となり、またその不当性を世に知らしめることになるのではないかと感じた。そしてそうした声を始め、沢山の声を丹念に拾い集めることも、弁護士にとって欠かすことのできない重大な職務である。本稿では、弁護士法や職務基本規程、さらに実際の事例も踏まえた上で、弁護士という職業人は、いかなる社会的義務・使命を負うについて、項目ごとに分析したい。
■弁護士とはいかなる存在か。
正直に告白すると、「基本的人権を擁護し、社会正義を実現することを使命とする」と弁護士法や弁護士倫理で使命を掲げられていることに...