佛教大学通信教育学部の「人権(同和)教育」のレポートです。戦後の同和教育史の記述が足りなく、B判定でした。
50年に及ぶ戦後の同和教育史を概括し、同和(人権)教育の意義と学校における同和(人権)教育実践のあり方を具体的に論述すること。
一、同和教育の意義
(1)同和教育とは
同和教育とは「同和問題を解決するための教育の営みの総称」であり、「一人一人の教育権を保証するとともに、『確かな学力』の定着を目指し平和的な国家及び社会の形成者として真理と正義を愛し、個人の価値を尊び勤労と責任を重んじ、自主的精神に充ちた心身ともに健康な」(※1)児童生徒を育てる取り組みである。
(2)同和教育の意義
教育の根源である学力保証、家庭・地域との連体、習熟の程度による指導方法の工夫・改善をする個別指導、R0719人権(同和)教育設題1 1
そして「生きる力」を育てる取り組みといった同和教育の主な内容は、教育の原点ともいえる。
二、同和問題の歴史
(1)同和問題の始まり
同和問題、つまり部落問題の発端は江戸時代のエタ・非人の身分制度によるものとされている。住んでいる地区により服装や職業の制限をされ、戸籍などの文書にも身分が記載された。
1971年に解放令が公布されエタ・非人制度が廃止され、法的な地位において職業などの制限は廃止されたが、精神的・社会的・経済的差別はかえって強まった。
(2)戦後の同和問題
1951年に「オールロマンス事件」により、政府の被差別部落に対する劣悪な対応が公になり、政府が対策R0719人権(同和)教育設題1 2
を打つことになった。
1953年には同和教育に取り組む全国各地の学校教育関係者や社会教育関係者によって全国同和教育研究協議会が結成される。教育の面では同和地区の子供たちは、家の仕事をするために学校を休みがちであったり、貧困により教科書代や給食費を払えない子供も多かった。さらに学校内では差別を受けるなどといった状況に置かれていた。これらを解決すべく同会は活動をしていく。
1961年には、同和地区の父母により教科書無償化運動が起こり、1963年に教科書無償の法律が制定し全国の小中学校の教科書が無償提供されることになった。
(3)現在の同和問題
現在は、戦後の様々な運動により進学率、就職率などの問題は改善されてきてはいるが、非差別部落者の闇リストが企業などで出回ったり、結婚において相手が非差R0719人権(同和)教育設題1 3
別部落出身者であることが分かれば破談になったり、完全に無くなってはいない。
二、学校での同和教育の具体的なあり方
(1)学校での同和教育
私自身当初「同和教育」という言葉を聞いてもあまりピンとこず具体的に何なのかわからなかった。だが調べていくうちに「部落差別」という言葉が出てきて、やっとどういった問題なのか分かったくらいだ。「部落」という表現に誤解が生じるため、「同和」としたということだが、そのことすら知らなかった。
「部落差別」は、小学校の社会と道徳の授業でそれぞれ1時間ほど使い学習したという記憶がある。当時は今この世の中にそのような差別があるのかと驚いたとともにどこか「別の世界の話」のように思った。実際に、私R0719人権(同和)教育設題1 4
が生まれ育った地域には差別は無く、目の当たりにした経験もなかった。「部落」という言葉も祖母や父が「こっちの部落ではこうだ」「あそこの部落に住んでいる○○さんが…」というように「部落」=「集落」という意味で普段から用いていたのでまさかいわれのない差別問題で使われる言葉とは思いもしなかったのだ。
中学校では、キリスト教の私立中学校へ通っていたため、今度は差別問題といえば何百年も昔の奴隷制度や肌の色による…などといった時代も場所も超えたまさに「別の世界の話」になり、日本国内における問題には触れていなかった記憶がある。
1981年度大学三年生と1991年度大学2年生の小・中学校での同和問題学習の有無について比較すると、小学校での学習者は共に6割。中学校での学習者は1981年度が7割で、1991年度が6割である。(※3)R0719人権(同和)教育設題1 5全国では、10年間でほぼ変わらずであるが、地域差が
大きく出ているように思う。
京都市では同和問題が教育における重点課題となり、地域教育としても取り組む課題となっているが、被差別部落が全国的にも非常に多い。
このように、実際に同和問題が実際に起こっていない地域では深くは掘り下げず、同じ日本国内にも関わらず意識に差がみられることが多い。
三、人権教育と同和教育
(1)日本における人権教育
1948年の世界人権宣言以来、人種や性差、子供など一連の人権問題について、各機関で様々に取り組んでいる。そんな中人権教育とは「知識とスキルを分かち伝え態度を育むことを通じて、人権の文化を世界中に築き
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上げることを目的とする教育・訓練・情報提供の取り組みである」(※1)と定義されている。
(2)これからの人権教育
1997年、政府は「人権教育のための国連10年国内行動計画」を発表し、社会の発展のためには人権教育が不可欠であるという認識を示した。従来、人権教育といえば、人権一般論についての知識理解を与える教育だったが、人権にかかわるそれぞれの課題について、歴史や経緯を踏まえた必要性を求める教育となった。
(3)人権教育と同和教育
当然、日本国内に古くからはびこる同和問題については、人権問題の重要な柱として考えていくことになる。世界各国で大きな課題となっている「人権問題」を各国で取り組んでいくのであれば、日本はまず自国に根強く残る同和問題について深く考えていくべきではないかと
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私は考える。実際私自身が同和問題に関してあまり馴染みが無かったことから言えるように、日本国内にこのような差別が残っていることすら知らない者が多いのではないか。そして、子供の頃からそういった現実を知らぬまま育ったが故に、成人してから結婚や就職などで突然に同和問題と触れる機会が会った際に浅はかな知識でいわれのない差別意識を持ってしまうのではないかと、恐ろしくも思っている。
実際に同和問題とは関係ない地区であっても、その歴史や事実を大きく時間を割いて伝えていくことが人権教育・同和教育の大きな課題だと思う。
※1「同和教育実践」後藤直・萩本善三・井川勝編著(佛教大学通信教育部)
※2「部落の歴史と人権教育」安藤五男(明石書店)
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