「イスラーム世界における夢と日本における夢との比較―中世を対象に―」

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 講義では、聖墓の捏造に夢が利用されるということを知り、今日のわれわれにおける夢の位置付けと中世頃の人々におけるそれとは随分とギャップがあるものだ、と考えた。具体的には、夢が人々を動かす力が現代よりも大きい、ということに関心を持ったのである。そのような経緯で以下、類似点を抽出することを中心に、中世代のイスラーム世界における夢と日本における夢との比較を行っていく。
 そもそも、昔から(アンジェロ・ブレリッヒはギリシャ時代にはるかに先行する時代から夢占いとインキュベーションの慣習が地中海全域で行われていたとする)人々は夢というものが、人間を超越した聖なる者達が自分たちに送ってきてくれるメッセージだと考えており、人間では到底知りえない未来のことについて知るための手段であった。それゆえに、夢は力を秘めうるのである。
 このことに関連して、まずはその土壌を形成した要因の部分であろうイスラームの成立・仏教の成立と夢との深い関係を示すエピソードについて述べる。
 ムハンマドが40歳の年、聖なるラマダーンの月に、メッカに近いサファの丘とメヴァの丘の中間にある山上の洞穴で眠っていたとき、彼は大天使ジブリールより、コーランの最初の啓示を受けた。そのためなのか、それ以前からなのか、ムハンマドは夢にかなりの関心を示しており、彼は毎朝祈りの後で、集まった信者たちに対して夢に何を見たかを尋ね、最も意味深い夢の意味を明らかにし、そして自分自身の夢を報告したといわれている。
 

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「イスラーム世界における夢と日本における夢との比較―中世を対象に―」
 講義では、聖墓の捏造に夢が利用されるということを知り、今日のわれわれにおける夢の位置付けと中世頃の人々におけるそれとは随分とギャップがあるものだ、と考えた。具体的には、夢が人々を動かす力が現代よりも大きい、ということに関心を持ったのである。そのような経緯で以下、類似点を抽出することを中心に、中世代のイスラーム世界における夢と日本における夢との比較を行っていく。
 そもそも、昔から(アンジェロ・ブレリッヒはギリシャ時代にはるかに先行する時代から夢占いとインキュベーションの慣習が地中海全域で行われていたとする)人々は夢というものが、人間を超越した聖なる者達が自分たちに送ってきてくれるメッセージだと考えており、人間では到底知りえない未来のことについて知るための手段であった。それゆえに、夢は力を秘めうるのである。
 このことに関連して、まずはその土壌を形成した要因の部分であろうイスラームの成立・仏教の成立と夢との深い関係を示すエピソードについて述べる。
 ムハンマドが40歳の年、聖なるラマダーンの月に、メッカに近いサファの...

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