≪事実の概要≫
被告人は、鉄骨鉄筋コンクリート造12階建マンションのほぼ中央部に設置された9人乗りエレベータのかごに燃え移るかもしれないと認識しながら、ライターで新聞紙等に点火し、これを当該エレベータのかごの床上に置かれたガソリンのしみ込んだ新聞紙等に投げつけて火を放ち、当該エレベータのかごの側壁に燃え移らせて、側壁化粧鋼板表面の化粧シート約0.3?を燃焼させた。
≪原審における被告人の主張≫
(1)エレベータのかごには建造物性がない、もしくは、独立の非現住建造物である。
(2)焼燬の結果が生じていない。
と主張した。
≪原審≫
(1)については、エレベータはマンションの共有部分であり、各居住空間とともに一体として住宅として機能していること、またこれを取り外すには作業員4人で丸一日かかることを理由に、建造物たるマンションの一部を構成するものとして現住建造物性を肯定した。
(2)については、ガソリンの火気による高温にさらされた結果、壁面表面の化粧シートが融解、気化して燃焼し、一部は炭化状態になり、一部は消失したことが明らかである以上、媒介物から独立して燃焼したことが認められるとした。
結論として、現住建造物等放火罪の既遂を認定した一審判決を支持した。
刑事法総合演習Ⅱ(刑法各論)
最決平成元年7月7日判時1326号157頁
≪事実の概要≫
被告人は、鉄骨鉄筋コンクリート造12階建マンションのほぼ中央部に設置された9人乗りエレベータのかごに燃え移るかもしれないと認識しながら、ライターで新聞紙等に点火し、これを当該エレベータのかごの床上に置かれたガソリンのしみ込んだ新聞紙等に投げつけて火を放ち、当該エレベータのかごの側壁に燃え移らせて、側壁化粧鋼板表面の化粧シート約0.3㎡を燃焼させた。
≪原審における被告人の主張≫
(1)エレベータのかごには建造物性がない、もしくは、独立の非現住建造物である。
(2)焼燬の結果が生じていない。
と主張した。
≪原審≫
(1)については、エレベータはマンションの共有部分であり、各居住空間とともに一体として住宅として機能していること、またこれを取り外すには作業員4人で丸一日かかることを理由に、建造物たるマンションの一部を構成するものとして現住建造物性を肯定した。
(2)については、ガソリンの火気による高温にさらされた結果、壁面表面の化粧シートが融解、気化して燃焼し、一部は炭化状態になり、一部は消失したこ...