わが国の社会福祉の歴史を、近代化の始まりである明治期から第二次大戦前の高齢者福祉について考察する。
明治期の国家は欧米列強に対する近代国家づくり「富国強兵・殖産興業」に力を注いだ。その為国家の福祉は脆弱な時代であった。近代日本最初の救貧法として「恤救規制」が制定されたのもこの頃である。この法律は、貧困の原因は怠惰にあり、救貧は政府本来の役割にあらずということを基本理念とし、「人民相互の情誼(国民同士の同情)」いわゆる、親族相救・隣保扶助といった共同体内部で救済すべきだとしている。救貧の対象もおのずと限られ、どこにも頼れない極貧障害独身者や、70歳以上の独身重症病者などを「無告の窮民」として救...