問題と目的
心理学とは自然科学と異なり物理量でない概念を扱うので、ある心理的事象の量に対して、それを測定する為に必要な物理的事象との対応関係を知ることが重要となる。精神物理学的測定法(psychophysical method、心理物理学測定法ともいう)は、Fechner(1860)の考案した精神−身体間の関数関係を導く手続きが研究の末に洗練されたものである。現在使われている主な精神物理学的測定法には調整法・極限法・恒常法の3種類があり、おのおの長所と短所がある。本実験では短期記憶の容量を測定という同一の心理量の測定に、極限法の一種である上下法と、恒常法の2種類を用いてその特徴を比較・検討する。
短期記憶とは人間の記憶モデルに関する研究の中で考案された概念であり、元々はAtkinson & Shiffrin(1968)の提唱した二重貯蔵モデルで用いられた。このモデルは人間の記憶を短期貯蔵庫と長期貯蔵庫に分類し、外界からの情報はまず短期貯蔵庫に入り短期記憶となり、そこでリハーサルと呼ばれる情報の維持活動を経て、我々が必要な時に思い出して使用できる長期記憶へと変換されるとしている。更にこのモデルでは、長期記憶の容量は無限であるが短期記憶には容量の限界があるとされている。これに関して、Miller(1956)が提唱したチャンクという概念を用いた説明がある。これによると人間の短期記憶はチャンクという情報のかたまりごとに保持されており、短期記憶で保持できるチャンクは個人差を考慮しておよそ7±2であるという。この7±2という数をマジカルナンバーという。例えば無意味な数字列を記憶する場合、おのおのの桁が1つのチャンクで保持されるとすると10桁以上は記憶できないことになる。しかし「0810」という数字列を「オハイオ」のように語路合わせでひとまとめにして覚えれば1つのチャンクで保持されるため、必ずしも記憶できる数字列が9桁以下であるというわけではない。
短期記憶の記憶範囲測定における
上下法と恒常法の比較
心理学専修課程 学生証番号XXXXXX
XXXX
XXXX年XX月X日提出
問題と目的
心理学とは自然科学と異なり物理量でない概念を扱うので、ある心理的事象の量に対して、それを測定する為に必要な物理的事象との対応関係を知ることが重要となる。精神物理学的測定法(psychophysical method、心理物理学測定法ともいう)は、Fechner(1860)の考案した精神-身体間の関数関係を導く手続きが研究の末に洗練されたものである。現在使われている主な精神物理学的測定法には調整法・極限法・恒常法の3種類があり、おのおの長所と短所がある。本実験では短期記憶の容量を測定という同一の心理量の測定に、極限法の一種である上下法と、恒常法の2種類を用いてその特徴を比較・検討する。
短期記憶とは人間の記憶モデルに関する研究の中で考案された概念であり、元々はAtkinson & Shiffrin(1968)の提唱した二重貯蔵モデルで用いられた。このモデルは人間の記憶を短期貯蔵庫と長期貯蔵庫に分類し、外界からの情報はまず短期貯蔵庫に入り短期記憶...