マコーマックの図の展開―「ともあれこの世の片隅で」
私は「同時代文学論三」の授業でエリック・マコーマック(Eric McCormack)の『ともあれこの世の片隅で』を紹介した。『ともあれこの世の片隅で』とは、売れない小説家が書面式のインタヴューに回答する形でつづられた小説で世界の片隅に生きる老人の哀愁がユーモアを交えて描かれている。私がこの作品を紹介しようと思ったのは、この作品の構造に面白さを感じ、構造から新しい読み方をしてみたいと思ったからだった。作品の内容の前に作者エリック・マコーマックの簡単な経歴を述べたい。エリック・マコーマックは一九四〇 年にスコットランドで生まれ、一九六六年、グラスゴー大学を卒業した後でカナダに移住した。そして一九七〇年から大学で教鞭をとるかたわら創作活動に入っている。一九八七年には短編集「Inspecting the Vaults」を出版、一九八九年には長編「Paradise Motel」を出版している。出版されている著作は「Inspecting the Vau...