「レーモン・ルーセルの言語」
私は本講義において一九世紀フランスの作家レーモン・ルーセル(Raymond Roussel)の『アフリカの印象』『ロクス・ソルス』を発表した。この作家を選択した理由は、ルーセルという作家は先生が第二回の講義でミシェル・フーコーと蓮見重彦を取り上げて論じられた、一九世紀半ばに起こった言語意識の変容により「皆が知っていることを皆が知っているように語るようになるということと関係しているのではないかと思ったからだった。具体的にいうと、言語の「物語」化をいち早く指摘していたミシェル・フーコーがレーモン・ルーセルの実験的な手法を評価していたことから、「物語」化する言語に抵抗する方法がそこにあるように思ったからだった。ルーセルを論じるにあたりまずは彼の生い立ち、主な著作について概略を述べ、次にルーセルの主要な作品『アフリカの印象』『ロクス・ソルス』等についてルーセルの実験的手法を紹介していきたい。レーモン・ルーセルは一八七七年一月二十日 パリに資産家の息子として生まれ派手の中で幼少期を過ごす。一八九〇年十三歳の時にパリ国立高...