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刑法事例演習教材
11 帳簿の紙吹雪
公務執行妨害罪について
甲は、国税調査官Bが税務調査のために事業関係帳簿の検討を進めようとしていたところ、Bから帳簿をつかみ取り、Bが手で制止しようとしたのを振り払い、調査を妨害した。この行為により、甲には、公務執行妨害罪が成立するのではないか(95条1項)。
甲は、公務員であるBが職務である税務調査を執行するに当たり、Bの手を振り払う暴行 を加えているので、公務執行妨害罪の構成要件にあたりうる。しかし、Bが執行しようとしていた税務調査は、身分証明書を提示した上で行うこととされているが(所得税法236条)、Bは、身分証明書を携帯しておらず、甲に対して提示することができなかった。そのため、この税務調査は違法であり、公務執行妨害罪で保護するべき公務にあたらないのではないか、問題となる。
公務執行妨害罪の保護法益は、公務員の職務行為の円滑な実施であるところ、その対象となる公務は適法なものでなければならない。もっとも、軽微な違法がある場合、その公務は保護の対象とならないと考えると、公務の円滑な実施を損なうことになりかねず、妥当でない。そこで、執行行為...