7男の恨みは夜の闇より深く(刑法事例演習教材)

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刑法事例演習教材
7 男の恨みは夜の闇より深く
 乙の罪責
 乙は、甲と共に、Aの体を後ろから押さえつけ、その顔面を強打し、加療4週間程度を要する打撲傷を負わせた。この行為により、乙には、傷害罪が成立する(204条)。そして、後述の通り、乙は、この傷害罪について共同正犯になる(204条、60条)。
 次に、乙は、Aが死亡したと誤信し、甲と相談した上、Aのハンドバッグを持ち去った。この行為により、乙には、窃盗罪が成立しないか(235条)。
 まず、乙には、強盗罪は成立しない(236条1項)。なぜなら、強盗罪は、財物奪取を目的とした暴行・脅迫をようするところ、乙は、財物奪取を目的とした暴行・脅迫をしていないからである。
 そこで、窃盗罪の成立について検討する。窃盗罪は、他人の財物に対する占有を侵害する行為であるが、乙は、Aが死亡したと誤信してそのハンドバッグを持ち去っている。そのため、占有侵害の認識がなく、窃盗罪の故意 が認められないのではないか。
原則として、 死者に占有は認められない。しかし、被害者を死亡させた行為と時間的場所的に近接した範囲内において被害者から財物を奪取する 場合に...

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