広告の効果について、日産セレナのイメージ戦略を例に考察を加えたもの。
◎ミニバンのイメージ戦略
◆第一章 はじめに
私がこれまで見たテレビコマーシャルで、一番印象深いのは、日産自動車のミニバン「セレナ」のCMである。それは小学生の頃に見た「モノより思い出」というキャッチコピーのCMだった。
車という、家に次いで大きい「買い物」をさせるCMでありながら、「モノより思い出」という全く逆の主張をしていたからだ。母が「300万円もするものを買わせるのに、面白いことを言うわねえ」と言ったのが、心に残っている。
だが今、大学生になって「消費者と広告」という授業を受け、リポートを課された際に改めて考えると、その戦略の巧みさと方向性の確かさに舌を巻く。このCMを素材に「ライフスタイルを提案して物を売る」ということを考えてみたい。
◆第二章 歴史的な経緯
このCMが始まったのは1999年6月。セレナのフルモデルチェンジの時だった。
プランナーは、当時博報堂勤務の小西利行氏。後にサントリー「伊右衛門」の商品開発からネーミング、広告キャンペーンまでを手がけ、業界各賞を総ナメにする人物。演出はこれまた「誰も知らない」「幻の光」などで国際映画賞を受賞する映画監督、是枝裕...