「金融危機における時価会計の凍結」
1.本稿の主張
米国証券大手であるリーマン・ブラザーズの破綻に端を発した世界の金融市
場の混乱は、依然として先の見通しがつかない状況が続いている。そうした金
融危機の中で、日米欧の各国で浮上しているのが、
「有価証券の時価会計を緩和
しないと、金融危機は収束しないのではないか」という議論である。実際、米
国や欧州、そして日本でも金融機関を中心として「時価会計を緩和するべきで
ある」という主張がなされている。しかし、私は金融商品の時価会計を緩和す
ることについて反対である。なぜなら時価会計は、金融商品を時価(市場価格)
で評価し、企業の決算に正確に反映させる方法であるためである。これにより、
企業の決算における恣意を取り除くことができ、適正に企業価値を算出できる
ためである。以下では時価会計の凍結に関する現状について考察する。
2.時価会計の凍結に関する現状分析
本稿のテーマである時価会計の凍結について述べる前に、時価会計について
簡単に説明する。時価会計は冒頭でも述べたとおり、金融商品を時価(市場価
格)で評価し、企業の決算に正確に反映させる会...