「成人期における精神保健の問題を総括し、現在、なぜ、うつ病や自殺が増えているかについて分析、考察しなさい。」
成人を取り巻く環境は、家庭や職場での対人関係、育児や仕事などを通じて、その負担は大きくなっていき、青年期に比べるとより一層現実への適応が要請されてくることはいうまでもない。理想や空想を抱きながらも常に現実に規定されざるを得ない面が多くなり、現実との妥協が必要となってくる。価値観の多様性が重視される中で限られた価値観に従って現実に適応していかなければならなくなる。職場では終身雇用や年功序列が崩れ、技術革新が進み、OA機器が導入され、否応なしに新しい事態への適応に迫られる。さらに転勤や単身赴任の範囲も諸外国にまで及ぶようになり、最近では、外国で指摘されていた、日本人ワーカーホリックを裏づけるかのごとく「過労死」という言葉で表現されるようになっている。
個体の生物学的な状態は安定しており、次第に衰えに向かって変化を続けていくのがこれまでの成人期の一側面であったが、環境の変化はグローバルな規模で起こっており、生態系のバランスさえ失われはじめている。社会ではストレスという言葉がしき...