簿記の歴史を見ていくうえで、簿記とは備忘記録・財産管理・資本保全という3つの観点から進んでいったものだ。まず簿記が貸借関係の「備忘記録」として開発されたことに疑問の余地はない。すでに、古代メソポタミアの粘土板にもそのような記録は見出され、組織的な記録が見出されたのは中世イタリアの13世紀初頭の両替商が採用する人名記録である。次に簿記は、債権の発生と消滅・債券の発生と消滅だけでなく、物財の増加と減少・したがって、すべての財産変動を記録して、さらに、「財産管理」のために機能する。貸借変動の事実を実証するために、この貸借変動を招来した取引事象、たとえば、現金の出納・商品の売買を反対記録することによってである。反対記録することは、また、現金変動・商品変動の事実を実証することになるからだ。特に、15・16世紀の商業を代表する冒険事業は、1回限りの旅商である航海ごとに出資者を募る組合であったので、これに従事する商人は、組合を構成する組合員に対して管理責任を果たさねばならない。人名記録に加えて、商人が作用する物財記録である。そして、簿記は、損益計算を前面に打ち出したことによって、財産管理と同時に、「資本保全」として機能する。資本変動の事実こそを実証しなければならないからである。資本変動の結果である、全ての財産変動を記録しただけでは、これは実証しえない。資本変動の原因である利益と損失の発生を反対記録して、これを実証してこそ、資本変動の事実を実証しうるはずである。特に、冒険事業が反復されて定着化するようになると、したがって、継続事業に移行するようになると、設立から解放までを人為的に区画して、定期的に損益計算をする「期間損益計算」に移行するので、これに従事する商人は、組合を構成する組合員、さらに、会社を構成する社員に対して保全責任を果たさねばならない。人名記録と物財記録に加えて、商人が採用する名目記録である。
簿記の歴史を見ていくうえで、簿記とは備忘記録・財産管理・資本保全という3つの観点から進んでいったものだ。まず簿記が貸借関係の「備忘記録」として開発されたことに疑問の余地はない。すでに、古代メソポタミアの粘土板にもそのような記録は見出され、組織的な記録が見出されたのは中世イタリアの13世紀初頭の両替商が採用する人名記録である。次に簿記は、債権の発生と消滅・債券の発生と消滅だけでなく、物財の増加と減少・したがって、すべての財産変動を記録して、さらに、「財産管理」のために機能する。貸借変動の事実を実証するために、この貸借変動を招来した取引事象、たとえば、現金の出納・商品の売買を反対記録することによ...